広陵高校の暴力問題、マスコミ報道なぜ遅れた 新聞社主催の高校野球で「告発」がSNSで先行拡大した事情

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

不信感をあおり、SNSだけが"声なき声"を代弁する構図

   もうひとつは、「商業イベント」としての問題だ。

   今回は被害者とみられる側の告発からオールドメディアでの報道までに時間がかかり、SNSでの拡散が先行した。

   当然ながら、被害者側にとってSNSでの告発は最後の手段だ。しかし報道メディアとしては、被害者だけではなく、加害者にも事実を確認した上で、公平な目を持って報じなくてはならないのも事実である。

   ただ、甲子園大会の場合、主催者として新聞社が名を連ねている。それがSNSでの加害者や組織への配慮・忖度による自粛ではないか、という見方へつながってしまったことは否めない。

   結果、SNSだけが"声なき声"を代弁する構図となり、不信感に火をつけてしまう。そして、その情報は真偽にかかわらず、加速度時に広まっていってしまったのだ。

   早いうちに毅然とした報道がなされれば、状況は変わっていたかもしれない。

   ただ、メディアと密接なつながりを持つ構造の高校野球の側面を指摘するスポーツ文化評論家の玉木正之氏は、以下のような経験をしたという。

   玉木氏は朝日新聞社系の出版社から依頼を受け、高校野球などのスポーツをメディアが利用する弊害を並べ、「メディアはスポーツ大会の主催者やスポーツ・チームの所有者(オーナー)になるべきでなく、スポーツ・ジャーナリズムに徹するべき」(『プレジデントオンライン』2023年5月25日)という原稿を書いたものの、没にされたのだそうだ。

   こうした関係性が、ジャーナリズム本来の役割を阻害している可能性は否めないし、SNSの拡散を止めることは難しいだろう。

   今回の一件は、高校野球を単なる美談や感動物語として消費する風潮に警鐘を鳴らしている。教育の場としての透明性、公平性、そして商業的利益との関係性を見直すことが求められている。

1 2 3
姉妹サイト