色恋営業を楽しむ客の不満
大人になるとたくさんの現実を目の当たりにし、いいことも悪いことも束になってかかってくる。壁にぶち当たれば、誰だって現実逃避をしたくなる瞬間が訪れるだろう。そんな時に非日常を求めて飲み屋へ辿り着く女性は非常に多く、心の寂しさを埋めるのがホストの役割とも言えよう。
色恋営業という疑似恋愛は、まさに「大人の遊園地」の目玉アトラクションと言えるかもしれない。イケメンと会話をするだけで満足する客もいるが、乙女は夢見心地なサービスを受けたいから大金を遣う。トキメキを全く欲していないのなら、そもそもホストクラブに通わないし、シャンパンのおねだりもあっさり断るはずだ。
ひるがえって今回の新ルールは、ある意味、目玉を潰されたようなもの。営業法を狭められたホストだけではなく、夢の世界を楽しむ客からも不満の声が挙がっているのは事実である。
あくまで営業は営業に過ぎないため、真に受けるのは御法度なのだが......。おとぎ話が操り広げられるから、夜の街の経済は回る。その観点では、筆者としては風営法の締め付けが、良い方向に働くとは思えない。
「夜の店などない方が良い」という意見を持つ人々からすると、「個性の消失=客足の減少=規模の縮小」を狙えるため、法の改変は好都合だ。しかし、行き場をなくした女性たちが必ず太陽の下を歩くのか?と問われると、たぶん違う。ある程度の「受け皿」は作っておくべきで、全てをキレイに掃除すればまた別のゴミが絶対に出てきてしまう。負の連鎖となってしまうような事態には懸念する。
そもそもの話、悪質行為をはたらくキャストがいけないのだけれど......。ルール改変が「有難迷惑」にならぬよう、世の中の動き方ももう少し工夫を凝らしてほしいものだ。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。