お笑いコンビ・チョコレートプラネットの松尾駿さん(43)がYouTube動画で展開した持論が波紋を呼んでいる。SNS上では、後輩芸人の稲田直樹さん(40)に誹謗中傷が殺到した件に言及した松尾さんが、「素人がなに発信してんだ」などと発言する切り抜き動画も拡散している。こうした中、お笑い芸人の永野さん(51)が「一般人からXを取り上げろ」などと過去の番組内で発言していたことも注目を集めた。永野さんの発言は「芸」だが、松尾さんの発言は「本音」だと指摘する声もある。両者は似たような主張をしているにもかかわらず、松尾さんの発言には批判が相次いでいるのはなぜなのか。毎日放送(MBS)元プロデューサーで同志社女子大学教授・影山貴彦氏に背景を聞いた。「ハゲいじり」めぐり「付け上がってるんですよ今、一般人が」松尾さんの発言は、アインシュタインの稲田さんがSNS乗っ取り被害に遭ったことを受けてのものだった。稲田さんは当時、不適切なダイレクトメッセージ(DM)を女性に送ったという疑惑を否定していたが、犯人だと決めつけるコメントが殺到していた。松尾さんはYouTube動画でこの件に触れ、次のような持論を展開。「芸能人とかアスリートとか、そういう人以外、SNSをやるなって」「素人がなに発信してんだって」。相方の長田庄平さん(45)からは「そうなると、めちゃくちゃ小さいコミュニティで何にも流行んないじゃん?」と言われていたが、「見てりゃいいの」と答えていた。2025年9月中旬、この場面の切り抜き動画がX上で拡散し、松尾さんの発言に対する批判が相次いだ。また一部のメディアからも、一連の経緯を説明したうえで発言を問題視する記事が報じられている。このYouTube動画は16日までに非公開になったとみられる。こうした中、永野さんの過去発言も注目を集めた。ABEMAのバラエティー番組「チャンスの時間」で主張したものだ。24年2月18日放送回では、ゲストが「ベストなキレ方」をアドバイスするという企画で、街中で一般人から「ハゲいじり」をされたというエピソードについて話す場面があった。永野さんは怒った方がいいと主張。「芸人だから面白いことをやってよ」という雰囲気があるとし、「付け上がってるんですよ今、一般人が。一般人からXを取り上げろ!」と訴えていた。スタジオからは笑いが起こりつつも、司会を務める千鳥のノブさんから「みんなのもんや!」というツッコミが入っていた。また別の回でも、永野さんは同様の企画で、「一般人の声なんて聞かなくていいよ!」と主張し、「芸能人が上なんだよ!」などと述べていた。こちらもノブさんが「そんなワケないやろ!」などとツッコんでいた。こうした永野さんの発言をスクリーンショットした画像がXで紹介され、今回の松尾さんの発言と比較する投稿が注目を集めた。永野さんは「芸」だが、松尾さんは「本音」だと指摘する声などが寄せられている。「演者は受け手に対するリスペクトを忘れてはいけません」前掲の影山氏は、松尾さんに批判が集まった理由を2点挙げた。まず、「素人」という表現が「軽視した印象を与える」と指摘。次に、普段は「ソフトで柔らかくて優しい」というイメージがあるため、より批判されやすいのではないか、と説明した。「演者は受け手に対するリスペクトを忘れてはいけません。芸人を中心とする演者のあいだでは『素人』という言い方をしますが、対外的には避けた方がいい。これは問題になるから避けた方がいいのではなく、受け手に対するリスペクトが心の中にあれば、上から下へという印象を与える『素人』という表現は使わないだろうと思います」また影山氏は、「受け手も演者に対するリスペクトを忘れてはいけない」とも。松尾さんの発言には「同じ芸人仲間を守ろうというきっかけがあった」と一定の理解を示し、この発言全体を冷静に判断することも大事だとする。松尾さんと永野さんは似たような発言をしていたが、その内容自体やその受け止められ方にはどのような違いがあるのか。影山氏によれば、永野さんは「素人」ではなく「一般人」という表現を用いていたことに加え、普段から偽悪的なキャラクター像がある。この2点に松尾さんとの違いがあったとする。また、周囲の反応によっても発言の受け止められ方が変わるという。「松尾さんと長田さんも名コンビで良いと思いますが、『チャンスの時間』の司会を務める千鳥のコンビも天下一品です。永野さんのキャラクターもありますが、千鳥がドンと構えて笑いにしてくれる。永野さんの周囲がより巧みだったという部分も大きいと思います」SNSでは、芸人の発言を「本音」と「芸」で見分ける声もある。だが影山氏は、「芸人が本音100パーセントで話すことはないです」と説明する。タレントのマツコ・デラックスを例に挙げ、「踏み込んだ発言をしてから『私ちょっと嫌いじゃないかも』などと言ってバランスを取る。緻密な計算に基づいています」。芸人の発言には「本音を言ってるように見せる芸」があって、その技術に違いがあるとする。最後に影山氏は、改めて「受け手に対する敬意を持って発言するならば、表現には慎重にならないといけない」と指摘している。
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