個々人の価値観が多様化する時代に突き付けられた難題
今回の問題が投げかけるのは、藤井氏演出の根幹に関わる問いだ。クイズ問題を考えるのは構成作家だが、その採択は藤井氏の感覚に委ねられているだろう。だが来年以降、番組はより厳しい目で見られるはずだ。
ただ、採択にあたり、捜査中の事案は避ける、故人を扱わないなど明確な基準を設けたり、第三者の審査を入れたりすれば、クイズ問題の作り手も委縮し、「攻めの姿勢」の藤井演出は骨抜きになり、『水ダウ』など同氏が手掛ける全番組も変質を迫られる。
個々人の価値観が多様化する時代、何を笑いにしていいのか、何がダメなのか。その線引きをどこに引くべきか、答えは出ていない。ただ今回、藤井氏が一線を越えてしまったことだけは確かなようだ。
(川瀬孝雄)