2025年10月4日深夜放送の『オールスター後夜祭'25秋』(TBS系)で、広末涼子さんの交通事故をクイズの題材にして波紋を呼んでいる。
広末さんの事務所が抗議→TBSが謝罪
これは、「時速165キロを出したことがないのは?」との設問で、大谷翔平さん、佐々木朗希さん、伊良部秀輝さんといった名野球選手とともに広末涼子さんを選択肢に提示(正解は伊良部)。クイズの題材としていかがなものか物議を醸した。
広末さんの事務所は6日、「現在も捜査継続中」として抗議と名誉回復措置を求める内容証明を送付。TBSは9日に謝罪し、配信動画から該当箇所を削除した。
また、同日、「刺されたことがないのは?」という問題も出題され、力道山さん(暴力団員に刺され死亡)、ブルーザー・ブロディさん(レスラーに刺され死亡)、棚橋弘至さん(交際相手に刺され重傷)、ジャイアント馬場さんの4択が提示された。正解は馬場さん。過去には、馬場さんや、美容家・鈴木その子さんの戒名を答えさせる4択問題が出題されたこともあった。
番組を手がけているのは『水曜日のダウンタウン』(同系、以下『水ダウ』)の人気プロデューサー藤井健太郎氏。言ってみれば「失礼を笑いに変える」のが特徴だ。
水ダウでの「勝俣州和ファン0人説」は失礼の極みとされ、24年1月の「テレビのロケが一度も来たことのない店を探す」企画では、参加した芸人が外観を「テレビ向きじゃない」とネガティブに評価し、正解(ロケ未訪問の店)なら料理も食べず紹介もせず去る演出が批判された。
今年(25年)7月には、泥酔した安田大サーカス・クロちゃんが起きるとなぜか川のほとりにいて、向こう岸に亡くなったはずの父親がいるという、死の淵を演出した三途の川ドッキリが「不謹慎」と炎上。
また、年始に「この1年で起こりそうなこと」を出題し、年末に答え合わせを行うTBSの人気特番『正解は1年後』も、「離婚しそうな芸能人は?」「不倫しそうな芸能人は?」に加え、コロナ禍では「12月30日、東京のコロナウイルス新規感染者は何人?」「2021年、東京オリンピックは開催される?」など、他人の不幸を蜜の味として前面に出す手法が藤井演出の真骨頂だ。
個々人の価値観が多様化する時代に突き付けられた難題
今回の問題が投げかけるのは、藤井氏演出の根幹に関わる問いだ。クイズ問題を考えるのは構成作家だが、その採択は藤井氏の感覚に委ねられているだろう。だが来年以降、番組はより厳しい目で見られるはずだ。
ただ、採択にあたり、捜査中の事案は避ける、故人を扱わないなど明確な基準を設けたり、第三者の審査を入れたりすれば、クイズ問題の作り手も委縮し、「攻めの姿勢」の藤井演出は骨抜きになり、『水ダウ』など同氏が手掛ける全番組も変質を迫られる。
個々人の価値観が多様化する時代、何を笑いにしていいのか、何がダメなのか。その線引きをどこに引くべきか、答えは出ていない。ただ今回、藤井氏が一線を越えてしまったことだけは確かなようだ。
(川瀬孝雄)