防犯カメラが映した予想外の光景
不安を拭えなかった祖父は、防犯カメラを設置。数日後、映像を確認してみると、そこには目を疑うような光景が映っていた。
「観光客が敷地内に入って、蛇口で手を洗ったり飲んだりしている姿がありました。なかには靴を洗っている人までいたんです」
祖父母は私有地であることを明確にするため、駐車場にカラーコーンを置き、「私有地につき、許可のない侵入はご遠慮ください」と複数言語で記した立札を設置した。
「水道代が大きく跳ね上がるほどではないにしても、知らない人が敷地に入ってくるのは怖いですよね」
立札を設置した後は、蛇口を勝手に使う人はほとんどいなくなったようだ。
「観光で来る人たちが悪いわけではないと思うんです。でも、ほんの少しの無関心が、誰かの生活を傷つけていることもあるんですよね」
近隣住民の中には、観光客増加でカフェの売上が上がるといった経済的な恩恵を受けた人もいるが、同時に「静かに暮らしたい」という声も少なくない。祖父にとっては、「観光地の賑わいは生活の負担でしかない」と高橋さんはいう。
「昔は、観光客が『こんにちは』と声をかけてくれることもあったんだけどね......」と祖父は苦笑していたとか。
人気観光地の陰で、地元の「静かな日常」が少しずつ失われつつあるのかもしれない。