職員が事務上のミスをした場合、内容によっては戒告などの懲戒処分を行うと滋賀県長浜市長が明らかにしたと、地元紙の京都新聞が報じ、ネット上で議論になっている。職員の処分については、逆効果ではないのかといった指摘が多い。長浜市は、なぜこのような措置を取ることにしたのか。市の人事課に取材した。「ミスを隠す方向に行く」「恐れてなんもしなくなる」「市役所職員の事務ミスを厳罰化へ」。京都新聞は2025年10月17日、ウェブ版のニュースで、こんなタイトルを付けて、長浜市の浅見宣義市長の方針を伝えた。長浜市では、24年6月から、市民生活に影響が大きい事務ミスが5件続発し、市議会は25年6月、「適正な事務執行を求める決議」を全会一致で可決し、再発防止策などを市に求めた。これに対し、浅見市長は市議会9月定例月議会で、「過失の程度や結果の重大性によって適正な処分を行う必要がある」と述べ、厳罰化を進める考えを示したという。これまでは、過失による単純なミスは処分しなかったが、今後は場合によって、一般職職員分限懲戒審査委員会に市長が諮問し、答申を受けて戒告以上の懲戒処分を行う場合があるとした。浅見市長は、「決して処分ありきではないが、市民の目が厳しくなる中、時代に即した処分を行うべきと判断した」と説明した。京都新聞のニュースが配信されると、X上などでは、処分を疑問視する声が相次いだ。「ミスを隠す方向に行く」「恐れてなんもしなくなる」「これは悪手やろ」といった懸念の声が上がり、むしろ「ミスが起きなくなる仕組みを」「業務量の見直しなどを図るべきだ」との指摘が出た。一方で、「信賞必罰も大事だ」「何らかの処分はあってもいい」と市長の方針に理解を示す向きも一部ではあった。職員のミスについて、浅見市長は、8月29日の本会議初日に近況報告で方針を示していた。京都新聞は、翌30日付朝刊で同じ記事を配信しており、今回のニュースは、ウェブ版に改めて掲載したようだ。「処分の基準を見直しただけで、厳罰化ではない」長浜市議会の決議では、職員の事務ミス5件を具体的に挙げている。それによると、24年6月は住宅新築支援補助金の処理誤り、同12月は特別児童扶養手当の支給遅延、翌25年2月は介護給付費財政調整交付金の算定誤り、同6月は物価高騰に対応した地方創生臨時交付金の算定誤り、ふるさと納税特例申請データの送付漏れ、が立て続け起きた。すべて市民生活に影響が大きいミスばかりだ。そのうちのいくつかは、すでに報道されている事案だ。住宅新築支援補助金については、市議会の決議では、「本来補助金の対象にならない方に対し交付決定を行ったことにより、発覚当時において、人生設計に痛手となる事態を生じさせた」と断じている。朝日新聞の24年7月19日付朝刊記事によると、「補助金受給のため急いで契約した」などとして17世帯が交付決定撤回を拒否し、市が救済に向けて制度改正する事態になった。市議会は決議の中で、「これらはいずれも市政に対する市民及び本市議会の信頼を損なうことにつながるものであり、極めて遺憾である」と強く非難し、原因分析を厳密に行うこと、リスク管理を徹底することなどを求めた。ただ、ミスを起こした職員への懲戒処分などは、決議では求めていない。それにもかかわらず、浅見市長は、なぜ処分を行う方針にしたのだろうか。この点について、市の人事課は10月21日、J-CASTニュースの取材に対し、こう説明した。「市議会の決議には、処分を求める意図はなく、今後事務ミスが起こらないように対策してほしいとのことでした。今回は、事務ミスに限らず、処分の基準を改めて見直したということです。また、原因追究、対策検討、研修を通じて、ミスをなくそうとしています。厳罰化というものではありません。市に寄せられた声については、ご意見として受け止めております」(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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