ケガ、通訳不能、そして「購入ゼロ」
やがて親子はパタークラブのコーナーへ移動。そこでも大声で笑いながらパターを振り回していたのだが、突然、子どもの一人が「ワーッ」と泣き出した。壁の角に頭をぶつけて、額から血がにじんでいたのだ。
山城さんはすぐに救護室に案内し、応急処理を依頼した。父親は何かを早口でまくし立てたが、翻訳アプリを使用しようとしても応じようとせず、ただただ大声を上げ続けたという。
幸い、子どものケガは軽傷で済んだ。
「処置が終わると、軽く会釈してそのまま帰りました。3~4時間も店にいて、結局何も買わなかったんです」
観光客の増加は確かに売上を押し上げる。しかし、ルールやマナーの違いによって、現場に負担がのしかかることもあるようだ。
「私たちは歓迎する立場ですが、観光の熱気が日常のルールさえかき消してしまうと、もう『おもてなし』だけでは支えきれなくなります」
観光が生む活気と疲弊――。その境界に観光地は揺れ動いている。