沈黙が続く車内 ただその場をやり過ごすしかなかった
「本当に腹が立ちました。酔っているからといって、なぜ人を傷つけることを平気でできるんでしょうか。誰も止められないこの沈黙にも、やりきれなさを感じました」
中村さんは怒りと恐怖を抑え、ただその場をやり過ごすしかなかったようだ。
男性は満足気に笑いながら、まるで自分が「舞台の主役」であるかのように車内を見渡した。「次は自分が指されるかもしれない」という不安だけが広がっていったという。
「幸い、私が指を指される前に最寄り駅に着きました。でも、降り際に見た男性の得意気な顔が、今でも忘れられません」
酔っぱらいの暴言は、取るに足らない冗談のように聞こえるかもしれない。しかし、男性から放たれた言葉は、確かに多くの人の心を傷つけたのだ。
「誰も何も言えないあの空気が、一番苦しかったです。怖さと悔しさが混ざった、どうしようもない気持ちでした」