2025年11月20日に行われた参院外交防衛委員会での、茂木敏充外相と共産党の山添拓議員によるやりとりがインターネット上で注目を集めている。「外務大臣、改めてこの答弁はやっぱり撤回すべきじゃありませんか?」山添氏は「『台湾有事が発生すれば、存立危機事態になり得る』とした高市総理の答弁が、深刻な国際問題になっています」と指摘し、「今般の日中関係の悪化の原因は、日本側にあるという認識を大臣はお持ちでしょうか?」と質問した。対する茂木氏は「いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して判断することになる」と回答。「総理は繰り返し、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して政府が全ての情報を総合的に判断すると明確に答弁をしており、これはまさに政府のこれまでの見解に即したものだ」と説明した。山添氏はさらに「金井(正彰・アジア大洋州)局長が中国に出向いていったのも日本側に原因があるからこその対応でしょう」とし、「安保法制を強行した安倍元総理でさえ、在任中に高市氏のような発言はしておりません」などと主張。「外務大臣、改めてこの答弁はやっぱり撤回すべきじゃありませんか?」と迫った。茂木氏は「先ほどの答弁の中で、私がそういった台湾有事について言及したということはないというのは、今の(話)で分かると思います。それから平和安全法制に対する考え方は、御党と全く見解をことにしております」と反論した。外務省の金井正彰アジア大洋州局長が中国を訪れた件については、「日中のアジア局長級協議は、交互に今までも予定してやっておりまして。前回が日本で開かれた(ため)今回は中国で協議を行った。『わざわざ今回の事態が起こったから中国に出向いた』というご指摘には当たらない」と説明している。「あの、先ほども答弁させていただいたんですが...」山添氏はなおも食い下がり、「高市総理の答弁は、これまでの政府の姿勢と果たして同じですか? 私はそうは言えないと思いますよ」と語気を強めた。茂木氏は「あの、先ほども答弁させていただいたんですが、もう一度同じ答弁をしてよろしいでしょうか?」と応じ、「それとも、なんていうか......『同じ答弁をするならいらない』というなら、しませんが」と皮肉を交えた。山添氏が「同じ答弁しかできないですか?」と苛立ちを見せると、茂木氏は「いや、違う。同じ答弁になりますんで、多分ですね。やりましょうか?」とし、委員長に促される形で答弁を続けた。SNSでは、あきれたような様子を見せた茂木氏の答弁を面白がる声が上がった。「先生が出来の悪い生徒にちょっとムカつきながら説明してるの図」「『丁寧にキレる』ところがまた大人の対応で秀逸です」「もう一度やりましょうか? 攻撃はいつ見ても面白い 相手の理解不足をジワジワ責めていくスタイル好き」茂木氏は10月28日に外務省で行った会見の際にも、共同通信の記者からの質問を受け「えっと、冒頭私がお答えしたこととほとんどかぶってるんですが、もう1回言った方がいいですか?」と回答。穏やかに応じつつも、皮肉をにじませたような受け答えにSNSで注目が集まっていた。共産党期間紙「質問に答えず『従来の政府見解に即したものだ』と強弁」なお、山添氏は委員会後、自身のXで「高市政権となって初めての外交防衛委員会で質問」と質疑の様子を振り返った。「雰囲気一変。与野党を問わず政府の軍備拡張路線に賛同し、『台湾有事』をめぐる首相発言を批判的に取り上げたのは私と公明党議員のみ」とつづり、「しかしこの間の一連の経過は、平和と安定のためには軍拡一辺倒でなくまともな外交こそ必要とむしろ鮮明にしている」と主張している。共産党の機関紙、しんぶん赤旗は今回の答弁について、「歴代政権の姿勢と矛盾 首相『台湾有事』答弁 山添氏指摘」との記事で「茂木敏充外相は質問に答えず『従来の政府見解に即したものだ』と強弁」とまとめている。
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