広島県安芸高田市にある安芸高田市歴史民俗博物館が2025年12月10日、入館料のキャッシュレス決済ができないことについて来館者から強い苦情を受けたとXで明かし、注目を集めている。J-CASTニュースは、同館が導入しない理由について詳しく聞いた。
理由を説明しても「そんなん知らんわ!」と激怒
博物館は、戦国大名・毛利元就の本拠地だった郡山城の麓にある。入館料500円(15歳以上の大人)を現金のみで対応している。同館の担当者への取材によると、この支払い方法に対する強い苦情を受けたのは、同日10日のことだった。
窓口で「今時なんで現金だけなんだ?」とのクレームを受け、担当者は導入に費用がかかることを説明した。だが来館者は「そんなん知らんわ!」と激怒し、500円を叩きつけて入場していったという。
同館は10日、このエピソードを紹介し、「確かにキャッシュレスの時代ではありますが、当たり前ではない旨、何卒ご理解下さい」とXで呼びかけた。11日19時までに約230万件表示されるなど注目を集めている。
担当者は11日の取材に対し、「今までキャッシュレス決済についてお客さんから聞かれることはあっても、ここまで強く言われるということはなかった」と明かす。「実装してないところに対してなぜそこまでクレームを言うのか、という気持ちになりました」
キャッシュレス決済を導入しない理由
現金払いのみとしている理由は複数ある。まずは決済手数料がかかる点だ。「私が調べた限りでは3%から5%かかります。入館料が500円なので、1人あたり15円から25円ほどが確実に減ってしまう」と担当者は説明する。
また、キャッシュレス決済によって博物館に来館者が増えるわけでもないとも指摘。さらに現金支払いと併用することで、スタッフの手間も増える。「来館者からすれば楽になるのは分かりますが、実際に運営していく上では負担になってしまいます」
博物館は市営で、市営施設としての課題もある。
「市の予算は歳入と歳出に分かれ、それぞれに科目が設定されている。決済代行業者への手数料をどの科目に入れるのか、どれだけ予算を見積もればいいのか。もらったものから引けばいいという話ではなく、市が外部に払い込むのであれば、それを予算化した上で使っていくというのが自治体の支出のやり方なんです」
担当者は、「キャッシュレス決済の導入は絶対にできないわけではないが、解決すべき課題がたくさんあって、1つ1つ解決していくような余裕もない」と話した。
同館は11日、「当館の入館料(高校生以上)につきましては、現金のみの対応となっております。また、高齢者割引やJAF割引等はございません。トラブル防止の為にも、その旨ご承知いただき、ご入館いただきますようよろしくお願いいたします」と公式サイトでも呼びかけている。