大阪・関西万博「2億円トイレ」設計の建築士、「大屋根リング」解体に異論 「ほんとうにいいの??」

   大阪・関西万博で「2億円トイレ」として注目を集めた「トイレ5」を設計した一級建築士の米澤隆氏が2025年12月18日、Xで大屋根リングの解体をめぐる困惑を明かした。

  • 万博会場では大屋根リングを背景に「ミャクミャク」が出迎えていた
    万博会場では大屋根リングを背景に「ミャクミャク」が出迎えていた
  • 大屋根リングの中を通ることもできた
    大屋根リングの中を通ることもできた
  • 万博会場では大屋根リングを背景に「ミャクミャク」が出迎えていた
  • 大屋根リングの中を通ることもできた

手がけた「トイレ5」は閉会後も活用を予定

   建築・インテリアデザイン関連の情報を発信するウェブメディア「TECTURE MAG 」が25年9月に公開した特集によると、米澤氏が万博で設計を手がけた「トイレ5」は閉会後、ユニット単位に解体し、公園や広場などに移設し、その場に必要な数や形に組み換えることができる仕組みだとしていた。

   最終的には建設・撤去工事一式で1億5000万円ほどで落札されたものだが、ダイヤモンドオンラインが24年2月に公開した記事「トイレ1カ所に2億円!『大阪万博は全てデザイナーズトイレ』で、また税金が消えていく」を発端として、SNSなどで「2億円トイレ」として批判を集めた。

   米澤氏は12月18日、万博会場のシンボルだった「大屋根リング」の解体開始を伝える報道を引用し、「えぇ!! 大屋根リングの解体、始まってしまってるやん!?」と驚きをあらわに。

   「これ、ほんとうにいいの?? 大屋根リング、残しておいたら絶対に世界遺産になるよ! 世界遺産級の価値ある建築を、ルールだからって、みすみす壊してしまうの?? こんなんでほんまにええんか? 日本社会!!」と訴えた。

「批判コメントや誹謗中傷が殺到してしまっています」

   大屋根リングは当初、全てを解体する予定だったが、保存を望む声を受け北東部分の200メートルのみを残し、人が登ることのできる形で活用する方針に変更された。解体された木材の一部は、能登半島地震の被災地に送られ、災害公営住宅などに再利用される予定だ。

   解体開始後の7日には、実業家の浜渦伸次さんがXで解体について「残念で仕方ない。日本の恥」「前の大阪万博で太陽の塔を壊すようなもの。残念すぎる」と厳しく批判し、議論を呼んでいた。

   米澤氏の投稿には、「万博が終われば解体する前提の設計で作ったのに残せ?」「大屋根リングに関しては元から終わったら解体するとされていたはず。200メートル分残っただけでも十分かと思われますが」といった指摘が寄せられた。

   米澤氏は自身の投稿をきっかけとした批判について、「『お前が金出せ』『ルールを守れ』『仮設だから残せない』......さらには『アホ』『馬鹿』『頭悪過ぎ』『テメェ』『公金チューチュー』など、批判コメントや誹謗中傷が殺到してしまっています」と投稿。

   「あくまで、僕に決定権などあるわけでもなく、いち意見、いち問題提起ですよ。ここぞとばかりに叩かなくても、もう少し人と人として互いに敬意を払った建設的な議論はできないものでしょうか」と困惑をつづった。

「残そうと思えば残せないことはないということでもあるのでは」

   大屋根リングの保存には「技術的にも金銭的にも相当なハードルがあることは重々承知しています」としつつ、「万博建築には、当初は仮設として建設されたものが、世論や社会状況の変化によって計画が更新され、恒久的に活用されることになった事例が多々あります」。「1889年パリ万博のエッフェル塔」「1967年モントリオール万博のアメリカ館(ジオデシックドーム)」「1970年大阪万博の太陽の塔」を挙げた。

   「残そうと思えば残せないことはないということでもあるのでは」とし、「財源の確保や、維持管理に見合うだけの収入・効果が見込めるかどうか」といった問題を踏まえて「可能性について、もう少し考えるための猶予があってもよいのではないか」と訴えた。

   大屋根リングの保存にとどまらず「無批判にルールに従うだけの事なかれ主義に陥ることなく、実情に合わせて再考し、更新していく必要もあるのではないかという問題提起でもあります」としている。

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