京都府八幡市内の認定こども園でビニール製のチョコを誤って食用にした問題が起き、この商品を製造する教材メーカー「アーテック」(大阪府八尾市)が2025年12月19日、同じシリーズの商品について在庫分を販売停止したと取材に明らかにした。
商品パッケージには、「食べられません」などの表示がなく、ネット上で分かりにくいとの声が上がっていた。同社は、商品にこうした表示をしたうえで、近く販売を再開するとしている。
クリスマスケーキのトッピングとして使用していた
誤用されたのは、同社の「フェイクスイーツ」シリーズのうち、「トッピング チョコスプレー」(5グラム)の商品だ。
ポリ塩化ビニール製で、チョコスプレーと呼ばれる細長く小さな粒状のチョコレートを模している。ピンクや水色、紫など、カラフルな色彩が目を引く。
報道によると、こども園の職員がこの商品を通販サイトで購入し、食用でないと気付かないまま、12月10日午前にクリスマスケーキのトッピングとして使った。市販のロールケーキに使ったホイップクリームの上に飾り付け、職員4人と6クラスの3~5歳の園児133人がケーキを食べた。その因果関係は不明だが、園児3人が帰宅後に腹痛を訴えた。現在は、症状が落ち着いているという。
こども園の園長らがこの日午後、余った商品を試食して、食用でないことが分かったという。同園では、すぐに保護者に知らせるとともに、八幡市と保健所に報告した。翌11日には、保護者説明会を開いて、今回の事態を謝罪した。
ケーキの材料については、これまで通販大手「アスクル」で買っていたが、サイバー攻撃で出荷停止となり、今回は別の通販サイトを利用したという。同園では、材料を使うに当たって、検食していなかったといい、食用でないことの確認を怠ってしまったと謝罪している。
今回の商品は、「教育用」と表示されているが、アマゾンなど大手通販サイトでも販売されている。ただ、パッケージの表には、「食べられません」などの表示はなく、ネット上では、疑問や批判も出ている。
メーカー「今後は『食べられません』と表示を入れる」
「食用ではないことが一目でわかるような表示が必要」「商品名はカラフルビニールチップで良いのに」「スーパーに陳列されてたら食用と間違うかもね」といった意見が出ている。
こども園に対しては、「保育教育関係者ならお馴染みのロゴ...」「明らかに園側、職員のミス」などと厳しい声もあったが、そもそも商品の表示が分かりにくいといった声が多かった。
商品を製造・販売したアーテックの生産管理課は12月19日、J-CASTニュースの取材に対し、誤用したこども園側から同社に連絡があったとして、今後の対応についてこう話した。
「フェイクスイーツのシリーズでは、パッケージを詰める化粧箱には『食べられません』といった表示がありましたが、パッケージ単体には記載がありませんでした。食べる恐れがある商品をピックアップして、在庫分については販売停止しました。商品については、『食べられません』といった表示を入れるように手配しており、準備が終わり次第、販売を再開させる予定です」
このシリーズは、購入者によって用途は変わるものの、粘土などで作った菓子やアイスのサンプルに飾り付けるのが目的だという。レストランなどで使われる食品サンプルとは違い、教育用としては、学校の授業で工作をするときに使うとしている。数年前からシリーズを販売しているが、誤って食べたと報告があったのは初めてだという。
食品を模した商品の法的規制について、消費者庁の表示対策課は19日、取材にこう述べた。
「食品サンプルやおもちゃに対し、景品表示法上で表示を義務付ける規定はありません。食品関係の法律でも、食品ではありませんので、規制されていないと思います。ポリ塩化ビニールといった原材料の表示はあったとしても、食品を模した商品なら、『食べられない』との表示もいるのではないでしょうか」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)