背景に深刻な人手不足、政府も投資支援策を用意
小売業界で無人・省人化店舗の導入が加速する背景には、深刻な人手不足がある。
前出の「省力化投資促進プラン」では、卸・小売業は約1045万人が支える労働集約的な産業であり、「特に小売業では、接客対応やレジでの精算、店内清掃等の店舗運営に大きく人手を要しており、DXによる効率化が急務」と指摘されている。
同プランでは、産業全体の労働人口のベースシナリオに基づけば、卸・小売業の就業者数は2021年の1062万人から2030年には945万人、2040年には836万人まで減少することが予想されている。
政府は中小企業省力化投資補助金やIT導入補助金などの支援策を用意し、小売業の省力化投資を後押しする方針だ。同プランでは2029年度の名目労働生産性目標を2024年度比で28%増とし、業界団体等との懇談会を通じた情報発信を年5回程度実施するとしている。
前述のとおり小売各社のIR資料でも、人件費増加や省人化への取り組みが明記されている。業界全体で人手不足とコスト増への対応が喫緊の課題となっている。
小売業界では、デジタル技術を活用した無人・省人化店舗の導入が急速に進んでいる。24時間営業の実現や顧客利便性の向上といったメリットに加え、人手不足とコスト増という業界共通の課題への対応策として、今後さらに広がる可能性が高い。
一方では、企業にとってはDX投資コストの負担、顧客にとっては利用方法が従来とは異なることに伴う煩雑化などのデメリットがあげられるかもしれない。
いずれにしても、政府の支援策も相まって、小売業のDX化は一層加速しそうだ。