「記者の個人的見解という言い方はとても我々に失礼」
2025年12月23日に行われた兵庫県・斎藤元彦知事の年内最後の定例記者会見は、質疑応答で記者がこのように苦言を呈する事態となった。これまでも斎藤知事は、質問を投げかける記者に対して、「記者さんの個人的見解として承っておきます」などと発言していて、斎藤知事と記者との間で溝は深まっている。
「地元にお金が落ちない支援策」と指摘され
この発言のきっかけとなったのは「播磨灘の牡蠣応援プロジェクト」を巡る質問だった。これは、斎藤知事が12月17日の定例記者会見で、ふるさと納税の新メニューとして発表された。知事が力を入れる観光政策「ひょうごフィールドパビリオン」(西播磨地域)の観光コンテンツを磨き上げ、今後のツアー造成につなげることで誘客の促進等に取り組むとしており、これが「カキ生産者への直接支援となっていない」などと批判の声が上がっていた。
兵庫県は19日、公式ウェブサイトに太字で「本寄付金は生産者に直接支払われるものではなく、県の観光施策に対してご協力をいただくものです。なお、生産者については、別途予算措置をしています」と付け加える修正を行った。
定例会見で記者の一人は、同プロジェクトがコンサルティング業務を行う専門家の報酬、セミナー費用など地元の外でお金が流れ、実際に地元にお金が落ちるのは、現地に行って体験をしたり、買い物をしたりするといった部分だけではないかと指摘。
「カキの業者の人どころか、地元にすらお金がほとんど落ちない制度ではないのか」
と追及した。
斎藤知事は、
「記者さんの個人的な見解として受け止めておきますけれども」
と述べた上で「西播磨地域の観光をしっかり磨き上げていく、そして誘客につなげていくということが大事だと思いますので、いろんな指摘は個人的な見解として受け止めておきますけれども、大事なのは西播磨地域、カキの不漁で大きな影響を受けていますので、そこをしっかり観光の面から応援していくということが大事」と語った。
「正面から答えない」との声にも「個人的見解として」と応戦
記者は、
「記者の個人的見解という言い方は、とても我々に失礼です。それだけはちょっと指摘させていただきます」
と知事の姿勢に苦言を呈した。そして、
「記者個人的な意見とか、先ほどお答えした通りとか、今年の8月から久しぶりに会見に参加しておりますが、本当にこういう失礼な答えが非常に多い会見ということで、3年ぶりに戻ってきて大変驚いています。何でもかんでも『個人の意見』ということにすれば、いくらでも逃げられてしまう。令和8年はこういった正面から答えない形ではなくなることを願って、質問を終わります」
と述べた。
だが、斎藤知事は、
「あの、個人的見解として承っておきます」
と間髪入れず反論すると、記者は「すごいですね。挑発ありがとうございます」と皮肉った。
「幹事社さん、今のは注意した方がいいでしょ」
「こんなん完全に言論弾圧やんけ。黙ってたらあかんよ」
と他の記者から怒りの声が。斎藤知事は「きちっと質問にはお答えさせていただいています」と応戦した。
幹事社の記者は、知事に「質問の趣旨を捉えて真摯にお答えいただきたい」と注意。記者に対しては「発言は当たった時にお願いします」と不規則な発言をしないように促した。
「セクシー・クイーン」に斎藤知事のアカウントが「いいね」
また、約7万人のフォロワーを抱える斎藤知事のインスタグラムについて、知事自身が「いいね」した投稿を巡って思わぬ話題に。知事のインスタグラムは、鳥インフルエンザの対応や県議会の動き、県産品のPRなどの「兵庫県のトップ」として、公的要素が強い投稿が数多く見られる。
だが、そんなアカウントで、韓国の「セクシー・クイーン」とも呼ばれる韓国人の女性歌手、キム・ヒョナさんがステージで露出度の高い衣装で踊っていた際、前触れなく倒れる様子が映った動画に「いいね」をしていたことが12月21日に分かり、SNS上で騒動となった。
SNSでは「新聞も読まず、国会も確認せず、消費者庁の助言も見ず。なのに、いいねを押しちゃうんだ」「見てもいいねしてもご自由にだけど、別垢でやりましょうよ。危機管理意識が低いこと、またバレちゃいました」など批判の声が上がっていた。
記者から投稿について問われると、斎藤知事は「ご指摘の点については、知らないうちに誤ってタップしてしまったということで、意図せず誤作動、誤操作です。内容自体も見た覚えも認識承知しておらず、知人からの指摘を受けて初めて気がついて対応しました」とコメントした。