2025年も終わりに近づいた。年末年始は、日常とは異なる時間が流れる。年が明けてからしたいこと......神社への初詣も、そのひとつだろう。しかし、新しい年を迎える穏やかな雰囲気の中で、思いがけないトラブルに遭遇したケースもある。今から10年ほど前の出来事として、田村公輔さん(仮名・30代)は、例年通り朝早く家を出て、地元の神社へ向かったという。「人、人、人」それでも保たれていた新年の秩序鳥居をくぐった瞬間、田村さんの目に飛び込んできたのは、想像以上の混雑だった。参道から拝殿前、お守りやお札の授与所、おみくじ所まで、どこを見渡しても人で埋め尽くされていた。「正直、『これは覚悟がいるな』と思いました。一歩進むにも周囲に気を遣わなきゃいけない感じでした」それでも、不思議と場の空気は荒れていなかった。「新年早々、イヤな気分になりたくなりという意識が、みんなにあったんだと思います。『どうぞ』『すみません』って自然に声を掛け合っていましたし、小さな子どもを抱えた人がいれば、道を譲る光景もありました」混雑の中にも、「新年らしい秩序」が保たれていたそうだ。「通して!急いでる!」空気を壊した中年男性の行動異常が起きたのは、拝殿へ向かう列の中ほどに差し掛かったときだった。背が高く、どこか焦りをにじませた中年の男性が、列の横から現れたのだ。列の流れに従う様子はなく、「通して!」「急いでるんだ!」と独り言のように声をあげながら、周囲の参拝客を肘で押しのけて進もうとしていた。「舌打ちをしながら、前の人の背中を押すような感じでした。見ていてヒヤッとしましたね」とくにひどかったのは、参拝後に授与所へ向かう折り返し地点だった。人の流れが一時的に滞った瞬間、男性は列を無視して横から割り込もうとした。そして、女性の参拝客と正面からぶつかったという。「痛い!何してるんですか!」「うるさいな、少しぐらい譲れよ!」男性は謝ることなく、さらに強く押しのけようとしたようだ。その様子を見ていた周囲の参拝客の我慢は、ここで限界を迎えた。「並べよ!」「ルールを守れ!」いっせいに非難の声が上がり、男性は完全に孤立。言い返す言葉を失い、周囲と激しい口論にまで発展した。最終的には、騒ぎを聞きつけた警備員が駆けつけ、男性は人混みの中から連れ出されたそうだ。「新年のあの空気の中で、男性だけが明らかに浮いていました。自己中な行動って、ああも目立つんだなと強く印象に残っています」人が集まる年末年始は、気持ちが高ぶりやすい時期かもしれない。だからこそ、周囲への配慮や最低限のルールを意識したい。
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