介護の裏で進む情報格差が相続をこじらせる
今回の事例では、直子さんに違法行為があったと断定できるわけではない。しかし、「説明されていない」「知らされていない」という感情があると、すべての行動が疑いの対象になる。
特に再婚家庭では、実子と再婚相手によっては、信頼の土台が弱いことがある。その状態でお金と判断の情報が誰か一人に集中すると、相続の場面で一気に爆発しやすい。
相続がこじれる原因は、財産額そのものより感情の対立にある場合が多い。再婚家庭では、介護を担う配偶者に情報と判断が集まりやすく、実子は状況を十分に知らないまま時間が過ぎやすい。その結果、「何も聞かされていなかった」という不満が残る。
問題は、介護中の経過やお金の使い方を、あとから確認できない点にある。共有がないまま亡くなると、事実を確かめる手段は失われて、疑いと感情だけが残る。この構図は、再婚、特定の人への介護負担の集中、実子との距離という条件が重なれば、どの家庭でも起こり得るかもしれない。
【プロフィール】
石坂貴史/証券会社IFA、AFP、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、マネーシップス運営代表者。「金融・経済、住まい、保険、相続、税制」のFP分野が専門。