年末年始休暇明けの出社時に同僚などが退職している「あけおめ退職」。マイナビの調査によれば、正社員の約3割がこの現象を経験しており、とくに20代では4割を超える。こうした中、退職代行サービスの利用も年明けに集中する傾向が見られる。
多くの企業が仕事始めを迎えた2026年1月5日、退職代行サービスの「元祖」として知られる「EXIT」への依頼が急増した。運営会社代表の新野俊幸氏は、月初めの平均的な依頼数と比較して約2倍に増えたとJ-CASTニュースの取材に明かす。その理由について、「あけおめ退職は、単なる年末年始の気分的な出来事ではなく、構造的な意思決定だと捉えています」と分析した。
年末年始に「辞めたい」と思う正社員は約3割
マイナビが25年12月18日に公開した上記調査によると、正社員の約3割(30.8%)が年末年始休暇を通じて「会社を辞めたい」と思ったことがあるという。
また、中途採用担当者に「退職者が出た長期休暇」を複数回答で聞いたところ、「年末年始休暇」が最多(36.6%)に。さらに「退職者がもっとも多かった長期休暇」を単一回答で聞いても、「年末年始休暇」が最多(23.4%)だった。
いわゆる「あけおめ退職」についても調査している。これは、年末年始休暇明けに出社したとき同僚などが退職している経験を指す。正社員の28.4%が「あけおめ退職」を経験し、20代では約4割(41.1%)と他年代より高い傾向にあった。
実際に、退職代行サービス「EXIT」を26年1月5日に利用したユーザーも急増。運営会社EXIT代表の新野氏によると、「自分の将来について真剣に考えた結果」という退職理由が目立ったという。
「内省」の年末年始、あけおめ退職は「構造的な意思決定」で生まれる
仕事始めの退職が増加する理由について、新野氏は「あけおめ退職は、単なる年末年始の気分的な出来事ではなく、構造的な意思決定だと捉えています」と説明する。
新野氏によれば、「年末年始」は、日常業務から強制的に切り離され、家族や友人と長時間対話したり、自分の人生・キャリアを俯瞰したりと、「内省」が起きやすい期間だという。
さらに近年では、(1)アメリカを中心としたスタートアップ・AI市場の急成長(2)SNSやポッドキャストなどを通じた転職・副業・起業のグローバルな可視化(3)「雇われ続けること=安定」という前提の崩壊――という価値観の変化も起きている。
新野氏は、「その結果、『この会社に"不満があるから"辞める』ではなく、『このままここに居続ける理由を、言語化できなくなった』という冷静な視点が、年末年始に一気に表面化するのだと思います」と分析する。
企業はどう対応すべきか。新野氏は「年末年始だけの施策で防ぐことは不可能」だと指摘する。あけおめ退職は、評価・報酬・裁量・成長実感・対話の密度などの要素が長期的に蓄積した結果として起こる反応だからだと説明する。
新野氏が勧める対策は次の4点だ。
まず、1on1の目的を「管理」から「思考の壁打ち」へ昇華させる。状況を確認するのではなく、「この人は今、何に違和感を持っているか」を拾いに行く。
2番目に、キャリアの「出口」を社内に用意する。昇進だけでなく、職種転換・裁量拡張・社内起業的な選択肢を提示する。
3番目として、辞める自由を前提にした関係を設計する。新野氏は「退職をタブー化するほど、決断は水面下で進みます」と述べる。
最後に、退職代行サービスを「敵」ではなく「シグナル」として扱う。利用されること自体が、組織のどこに摩擦があるかを示すデータになるとしている。