恵方巻はなぜ高くなったのか 値上げ時代に試される企業の工夫 「納得できる理由」がポイント

   2026年の節分シーズン、恵方巻の価格上昇が関心を集めている。帝国データバンクのリポートによると、コメ価格などの高騰を背景に、恵方巻は2年連続で対前年比10%を超える値上げとなり、定番商品でありながら家計への負担感は強まりやすい状況だ。

   ただ、市場全体を丁寧に見ると、単なる値上げでは終わらせず、その価格に見合う価値を示そうとする企業の取り組みが広がっている。値上げが前提となった今、恵方巻市場は新たな競争局面に入っている。FP(ファイナンシャル・プランナー)が解説する。

  • 値上げが続く恵方巻、差別化のポイントは(写真はイメージ)
    値上げが続く恵方巻、差別化のポイントは(写真はイメージ)
  • 「恵方巻」平均価格推移(26年1月21日付「帝国データバンク」のリポートより)
    「恵方巻」平均価格推移(26年1月21日付「帝国データバンク」のリポートより)
  • 値上げが続く恵方巻、差別化のポイントは(写真はイメージ)
  • 「恵方巻」平均価格推移(26年1月21日付「帝国データバンク」のリポートより)

値上げは避けられない...企業の打ち手は

   恵方巻の原価は、コメを中心とした原材料価格の影響を強く受ける。近年のコメ価格の上昇は一時的なものではなく、企業努力だけで吸収するのが難しい水準に達している。その結果、価格転嫁は事実上避けられない判断だとみられる。

   こうした中で、企業が取る対応は大きく3つに分けられる。第1は、量やサイズを調整し、購入時の価格負担を感じにくくする方法だ。一本を小ぶりにした商品や、複数人で分けやすい構成は、値上げ局面でも選びやすさを残す工夫といえる。

   第2は、価格を上げる代わりに、内容の価値を明確に打ち出す戦略である。たとえば、ファミリーマートでは、手頃な価格帯の商品を用意しつつ、江戸前寿司の名店「銀座おのでら」や、焼肉店「焼肉トラジ」が監修した高付加価値の恵方巻を展開している。

   価格帯にあえて幅を持たせることで、節約志向の消費者から、品質や話題性を重視する層までを取り込む狙いがある。恵方巻市場で進む「消費者ニーズの二極化」に対応した商品構成といえる。

   第3は、数量限定や節分当日限定といった売り方。日常商品ではなく、行事向けの商品として位置づけることで、価格上昇への納得感を高めようとする動きだ。

価格ではなく体験へ

   値上げ局面では、消費者が価格そのものよりも「納得できる理由」を持てるかどうかが重要なポイントになる。そのため、近年の恵方巻では、価格訴求に頼るのではなく、「見た目」や「楽しさ」を前面に出した売り方が増えている。

   特に目立つのが、断面の美しさを意識した商品づくりだ。具材がはっきり見える恵方巻は、写真に撮りやすく、SNSで共有されやすい。これは購入前の判断材料になるだけでなく、購入後の楽しみまで含めた体験価値を高める役割を果たしている。

   また、利用シーンを具体的に想定した工夫も進んでいる。家族で分けやすいハーフサイズや、子どもでも食べやすい具材構成の商品は、「一本いくら」という価格基準から消費者の視点を少しずらす効果がある。節分を単なる食事ではなく、「家族で過ごす時間」として提案することで、価格に対する受け止め方を変えようとする狙いだ。

   こうした取り組みは、値引きに頼らずとも、消費者が商品を選ぶ理由を作るマーケティングとして機能している。いずれにしても、恵方巻をめぐって、値上げは避けられないが、その分だけ、商品内容や売り方、伝え方への工夫が必要となっている。



【プロフィール】
石坂貴史/証券会社IFA、AFP、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、マネーシップス運営代表者。「金融・経済、住まい、保険、相続、税制」のFP分野が専門。

姉妹サイト