「民事不介入」の原則が痛ましい児童虐待を呼んだ歴史
一方で、こうした阿部氏擁護の声が、本当にDV被害や虐待に苦しむ人々の声をかき消してしまうのではないかと懸念する意見もある。
この問題を考えるうえでは、日本の警察組織に長く存在した「民事不介入」の原則を振り返る必要がある。
「民事不介入」とは、家庭内暴力や個人間の金銭トラブルなどについて、国家権力である警察はみだりに介入すべきではないとする基本姿勢である。
しかし、その結果として深刻な被害の兆候が見過ごされ、取り返しのつかない悲劇が繰り返されてきた。
その象徴的な事例のひとつが、1999年の桶川ストーカー殺人事件である。この事件では、被害者が繰り返し相談していたにもかかわらず、「男女間のトラブル」として扱われたことで対応が遅れ、最終的に痛ましい結果を招いた。
この事件を契機として、翌2000年にはストーカー規制法が成立し、「民事不介入」の原則を見直す流れが加速した。
また、今回のような家庭内トラブルについても、「民事不介入」の考え方や児童相談所と警察との連携不足が背景にあったと指摘される事例は少なくない。
2018年に起きた東京都目黒区5歳女児虐待死事件や、2019年の千葉県野田市小4女児虐待死事件などは、その代表例として挙げられる。
こうした反省を踏まえ、現在では児童相談所と警察が緊密に連携し、虐待が疑われる事案を認知した際には、ためらわず介入する体制が整備されている。
今回の警察による介入も、そうした流れの中で発生した。
報道によれば、警視庁は「阿部氏を現行犯逮捕する必要があると判断した」とされる。
警察としては、児童虐待防止の観点から最悪の事態を想定し、迅速な対応が必要だと判断したのだろう。