皇室典範改正案は2026年7月7日の与野党協議で審議入りすることで合意したが、衆参両院議長がまとめた「立法府の総意」をもとにした政府案に対して野党側には「総意を逸脱している」などと異論がある。参院自民党はテレビなどでの「中継なし」での審議を求めており、なお曲折が予想される。所功氏、岸信介氏が会長として作成した改正案要綱を「国会議員は読み直してほしい」「126代にわたって、男系で皇統が継承されてきた、世界でも比類がない歴史的事実こそが、天皇の権威と正統性の源だと考えております」「皇統に属する男系男子を皇族とする案を第一優先として、国会における議論を主導してまいります」。7月7日放送のBS-TBS「報道1930」によると、高市早苗首相は、4月の自民党大会で、こう演説した。しかし、皇室の歴史に詳しい所功・京都産業大学名誉教授は、「高市さんもそうですが、国会議員はよく読み直してほしい」とくぎを刺す。自民党の前身である自由党が1954年に作成した「日本国憲法改正案要綱」によると、「皇位継承については、皇室典範第一条を改正し、皇男子なき場合は皇女子がこれを継ぐものとする」。それまでの「男系男子による継承を改正し女性天皇を認める」としたのだ。この時の調査会長は、安倍晋三・元首相の祖父にあたる岸信介・元首相だった。小泉政権時代、有識者会議は女性・女系天皇容認に踏み込んだその後、2005年11月の小泉純一郎政権当時の有識者会議報告書では、「女性・女系天皇容認」に踏み込んだ。ただ、皇室典範は1889年の制定当時に「男系ノ男子之を継承ス」とされ、1947年の日本国憲法下で改正された時も「男系男子の継承」は変更されなかった。皇族数の確保に向けた皇室典範改正を議論する全体会議は、2024年以来10回にわたって行われてきたが、6月10日に衆参両院議長らがあらためて会議を開き、「立法府の総意」として、(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ (2)旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える、との案をまとめた。しかし翌11日に、平成天皇陛下が記者会見で、この「立法府の総意」について、「国民の皆さんの理解が得られるものになることを望んでおります」と述べている。ただ、6月30日に閣議決定された政府案は、(1)に関連して、婚姻した女性皇族については、住民基本台帳法を適用する、(2)については、対象は旧11宮家出身の15歳以上の男系男子とするなど、養子の子孫の男子に皇位継承権がある、とした。これに対し、野党各党は、「立法府の総意から逸脱している」として強く反発。7月6日の参院決算委員会で、立憲民主党の吉田忠智氏は、「合意していないものが(法案には)盛り込まれている」「立法作業をやりなおすべきだ」と訴えた。野党各党「立法府の総意から逸脱している」ノンフィクション作家の(平成の天皇皇后と6回20時間を超えて歓談経験がある)保阪正康さんは、「天皇家の声、旧宮家の声、国民の声をまったく聴いていない、無視している」「考えられているのは、政権の一部の周辺で男系男子にこだわるところがあるが、これを全面的に法的に取り込もうとする危険なプロセスをたどっている」と批判している。ジャーナリストの後藤謙次さんは言う。「男系男子を強く訴える高市さんが首相になり、連立を組んだ日本維新の会が男系男子論者で、一気に議論が高まってあっという間に突き進んだ」「右派議員の人たちに立ちはだかる壁は『愛子さま人気』。女性・女系天皇が生まれる芽を徹底的に摘んでおこうと」「いまさら名前を捨てて生き方を変えなさいというのは、酷な話だと思う」「報道1930」は、「改正案」が「養子として皇族に迎える」とする「旧宮家」の一人、久邇朝広さん(81)に話を聞いている。3歳で皇籍を離脱した人である。「手を挙げる人はいるのかな」「15歳って、自分はこう生きるんだ、って生き方を見つけている人が多いと思う」「そういう人にいまさら名前を捨てて生き方を変えなさいというのは、酷な話だと思う」改正を急ぐ政府、国会に対しては、「旧宮家の人たちの本人に意見を聞いているのか。生き方を聞いてこれで良しとするような、そういう議論をしているのかどうか、ですね」。久邇さん自身に、立法関係者が聞いてきたことは一切ないという。参院自民の磯崎仁彦国対委員長は6日、立憲民主党の斎藤嘉隆国対委員長と会談した中で、特別委員会では、審議のテレビやインターネットでの中継をしないように求めた。朝日新聞は、「中継なし」との自民党の提案に、野党側からは「よっぽど隠したい事情があるのか、絶対に許さない」などの声が出ていると書いている。(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)
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