2024年 5月 4日 (土)

2050年「CO2ゼロ宣言」とは何なのか! やる気がゼロ?の菅政権【震災10年 いま再び電力を問う】

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   再生可能エネルギーに詳しい環境学者の飯田哲也(いいだ・てつなり)さんは、「CO2ゼロ宣言は、再生可能エネルギーの話」と言う。

   現在、菅政権が「2050年 CO2ゼロ」を宣言しているものの、そのロードマップは定かでない。原子力発電が稼働を停止している現在、日本の電力はCO2を排出する火力発電に依存している。これをどのように抑えていくのか。課題である。

   いったい日本の電力はどこに向かっていくのか――。

  • 日本の「CO2ゼロ宣言」遅すぎる……(写真は、環境学者の飯田哲也さん)
    日本の「CO2ゼロ宣言」遅すぎる……(写真は、環境学者の飯田哲也さん)
  • 日本の「CO2ゼロ宣言」遅すぎる……(写真は、環境学者の飯田哲也さん)

この30年間、日本は何もしてこなかった

――菅政権が2050年の「CO2ゼロ」を宣言しました。どのように思いますか。

飯田哲也さん「2050年は遠い先のようにも感じますが、2020年から30年を遡ると1990年です。この1990年に地球温暖化防止のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)ができ、1992年にブラジルの地球サミットで世界が地球温暖化防止枠組み条約を締結しました。すでに30年間を経て、この先の30年間の話をしようというのです。30年先が遠い話というわけではありません。
その流れの中で、日本は、これまでの30年間で何もしてきませんでした。今回、日本は「2050年 CO2ゼロ」を宣言したのですが、すでに120を超える国が『CO2ゼロ』を宣言しており、地球温暖化防止への取り組みでは劣等生ともいえる、今さらながらに遅い宣言でもあるのです。

――「2050年 CO2ゼロ宣言」のきっかけは、なんだったのでしょう。

飯田さん「2050年のCO2ゼロ宣言は、2015年のパリ協定からの流れといえます。これまでの地球温暖化防止の取り組みは、経済を重視すれば火石燃料を使用せざる得なく、いわゆる『経済と環境の対立』を解消する決め手がありませんでした。さらに、途上国に対しては地球温暖化防止の取り組みが発展を妨げてしまう、『先進国と途上国の対立』も温暖化防止の取り組みを妨げる問題として立ちはだかっていました。その状況を打開する『魔法の弾』(特効薬)が自然エネルギーであり、とりわけ太陽光発電と風力発電なのです。
太陽光発電と風力発電は2010年からの10年間で大きく進展しました。世界は、地球温暖化防止に向けて最速かつ最大の効果を期待できるのは、この太陽光発電と風力発電を利用した『自然エネルギー100%』こそが最も実現可能であることを、世界中で確信しています」

――世界の産業界も変化しています。

飯田さん「はい。世界の産業界も、自然エネルギー100%を目指す企業の集まりである『RE100』(「事業運営を100%再生可能エネルギーで調達すること」を目標に掲げる国際的なイニシアチブ)が2014年に始まりました。300社にのぼる世界のグローバル企業が参加していますが、自然エネルギーへの認識が変わっていったのがこの時期といえます。
しかし、日本ではRE100の自然エネルギー100%の運動は、原発ゼロを意味するため、経済産業省と日本経済団体連合会が、この運動を日本で『禁句』にしたとささやかれています。実際に日本の企業がRE100に参加したのは、RE100の発足から3年後の2017年のリコーが最初です。現在でも30社程度しかありません。日本では、政府も産業界も、CO2ゼロに向けての認識はほど遠いといえます。 すでに世界は、『2050年には太陽光と風力が中心になる』というエネルギーシナリオが中心です。太陽光エネルギーが7割。風力エネルギーが2割。その他の自然エネルギーで、再生エネルギー100%という構造です。これに対して、日本では菅政権が『2050年CO2ゼロ宣言』をしましたが、その実現をめぐって、国内で原発推進派と再生可能エネルギー推進派も対立しています。米国のバイデン政権が200兆円もの予算を投じるグリーンニューディール政策のような動きもありません。菅政権に確信をもって『再エネ100%』に変えていこうという意思があるかは疑問です」
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