2021年 9月 23日 (木)

『AKIRA』の赤いバイクが走り込んでくるはずだった五輪開会式!『演出責任者』変更でボツに――ほか5編

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   物悲しい雰囲気が漂った東京五輪開会式で、唯一、私が感動したシーンは、長嶋茂雄(85)が王貞治、松井秀喜と聖火ランナーとして現れたときだった。長嶋もこの日を楽しみに、昨年秋(2020年)から過酷なリハビリに取り組んでいたそうだ。足取りはおぼつかないが、左手でトーチを掲げる立姿は現役時代の彼を彷彿とさせるほどカッコよかった。

   亡くなった長嶋の妻は、前回の東京五輪のコンパニオンだった。美しい人だった。プロ野球史上に燦然と輝く巨人軍の9連覇は翌年から始まった。

   長嶋の次に被災地の子どもたち6人が走り、テニスの大坂なおみが聖火台に点火した。1199ページにもなる開会式の台本を入手した週刊文春によれば、長嶋たち3人が「最終聖火ランナー」に予定されていたそうだが、「女性蔑視発言」で森喜朗が辞任すると、IOCが掲げる「多様性と調和」を体現する存在として大坂に白羽の矢が立ち、本人に打診したのは3月だったという。

   バッハIOC会長の13分もの長ったらしいあいさつに参加者は呆れ、疲れ、白けていた。深夜に近い11時15分に天皇が開会宣言をしたが、菅首相は座ったままで、同席していた小池都知事に促されてあわてて立ち上がった。高齢で疲れていたとしても、礼を失すると、自民党幹部が嘆いていたと文春が報じている。事前に伝えられていた通り、宣言の中に「祝う」という言葉はなく、「記念する」に変更されていた。

   最初の台本では、セレモニーは新国立競技場に大友克洋の漫画『AKIRA』の主人公の愛車・赤いバイクが颯爽と走ってくるシーンで幕を開け、ステージには『Perfume』の3人が登場するというものだったそうだ。だが、演出振付師のMIKIKOは、五輪事業を仕切ってきた電通の代表取締役である高田佳夫らに"排除"され、高田と同期でCMクリエイターの佐々木宏が後釜になる。その佐々木は、タレントの渡辺直美を侮辱する演出プランを出していたことが発覚して辞任。開会式直前に、式の作曲を担当していた小山田圭吾の「障がい者イジメ」が明るみに出て辞任に追い込まれた。

   さらに、ショーディレクターを務める元お笑い芸人・小林賢太郎の「ユダヤ人差別発言」が報じられ解任と、まさに"呪われた"としかいいようがない惨状で、組織委の中からも「開会式は中止すべきだ」という声が上がったというのである。

   週刊文春は、竹中直人も出るはずだったが、小林が解任された日に、竹中も辞任を申し出ていたそうだ。1985年に竹中は『放送禁止テレビ』というオリジナルビデオを出していて、その中で障がい者を揶揄するようなコントを演じていたため、竹中が組織委に連絡して辞退したそうである。

「復興五輪」にNG出したIOC 「世界で困っているのは東北だけではない」じゃあ、なんで日本でやるのか

   当初、復興五輪といわれたが、週刊文春によれば、これを潰したのはIOCだという。「世界で困っているのは、東北だけではない。特定の震災を限定的に取り上げるのはダメ」と演出側に伝えていたそうだ。なぜ、安倍前首相はこれに抗議しなかったのだろう。

   その代わり、もはやこの手の祭典では陳腐になってしまっている『Imagine』を強くリクエストしてきたという。バッハ会長に代表される"ぼったくり"集団といわれるIOCが、『Imagine』を流すことを求めたというのは、ブラックジョークとしか思えない。

   「なぜ今東京五輪なのか」。この疑問に正面から答えない菅政権だが、始まれば菅首相の思惑通り、NHKを始めとするテレビ局は五輪一色になり、国民も金だ銀だと浮かれ調子である。でも、忘れてはいけない。この五輪は国民の多くが望んだものではないことを。ニューズウイーク日本版で李ナオルは、東京五輪を開催する意義の一つは、「日本の市民の反対運動によって五輪の意味を世界に改めて問い直したことだ」といっている。

   私は五輪中継を見ないが、夜はNetflixやAmazonプライム、ツタヤで借りた映画やドラマを観ているから飽くことがない。作家や評論家たちがコロナ禍の日々を日記風に描いた『パンデミック日記』(新潮社)の中でも、多くの人がこの機会にNetflixを見始めたという記述が多くある。私はAmazonプライムもよく観るが、特に古い映画が観られるのが嬉しい。先日も芦川いづみの出ている『しあわせはどこに』(1956年)を観て、芦川の美しさにしびれた。小栗康平の『泥の河』(1981年)はNetflixで観ることができる。

   唯一残念なのがNHKBSで、エンゼルス大谷翔平の中継が観られないことである。大谷はきょう29日も37号打ったってよ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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