「鎌倉殿の13人」 胸アツ政子演説シーン 吾妻鏡を踏まえて味わうと?
<歴史好きYouTuberの視点>

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政子演説の「完璧すぎる」内容

   ドラマでは、大江(広元)殿が書いてくれたカンペを読むのをやめて、本音を話した政子でしたが、『吾妻鏡』に書かれている政子の演説(安達景盛を介して指示したとされている)はどのようになっているのでしょうか。

皆、心を一つにして承るように。これが最後の言葉である。
故右大将軍(源頼朝)が朝敵を征伐し、関東を草創して以後、官位といい、俸禄といい、その恩は既に山よりも高く、海よりも深い。(その)恩に報いる思いが浅いはずはなかろう。そこに今、逆臣の讒言によって道理に背いた綸旨が下された。
名を惜しむ者は、速やかに(藤原)秀康、(三浦)胤義らを討ち取り、三代にわたる将軍の遺跡を守るように。ただし、院(後鳥羽)に参りたければ、今すぐ申し出よ。
(吉川弘文館『現代語訳吾妻鏡8 承久の乱』より引用)

   このように、頼朝への恩を訴え、御家人たちを鼓舞しました。

   「義時を救え」というのではなく、「義時を追討せよ」という命令に従うということは、頼朝公の築き上げた鎌倉のコミュニティ(いわゆる幕府)を蔑ろにするものであると論点をすり替え、さらに「元凶は上皇様ではなく、上皇様をそそのかした悪い奴らのせいだ」として、戦う相手は後鳥羽上皇ではなく、藤原秀康・三浦胤義らであることを強調しました。

   これなら、「後鳥羽上皇と戦うのは嫌だ」という御家人たちも、上皇様を唆した悪い奴らとなら戦えます。

   あまりに完璧すぎる演説の内容に舌を巻いてしまいますが、この戦いで強攻を訴えた大江広元らがブレーンとなって作られたのかもしれません。

   来週はいよいよ承久の乱。そして最終回。鎌倉殿の13人はいったいどのような結末を迎えるのか、最後までともに見届けましょう!

   さて、今回の記事はここまで。ドラマに関するさらに詳しい解説は、是非YouTubeチャンネル・戦国BANASHIをご覧ください。それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ!

(追記:参考文献など)今回の参考文献は、『頼朝と義時 武家政権の誕生』(呉座勇一著、講談社現代新書)や『北条政子 尼将軍の時代』(野村育世著、吉川弘文館・歴史文化ライブラリー)、『承久の乱と後鳥羽院』(関幸彦著、吉川弘文館・敗者の日本史)など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。

<第47回解説動画は、(J-CAST)テレビウォッチのオリジナル記事下動画や、YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」からお楽しみください>


++ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2022年冬には登録者数が13万人を突破した。

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