精密機械業
将来を展望するための3つのポイント
ポイント1
「ポスト・デジタルカメラ」は開発できるのか
極めて正確な原子時計に基づいて送信される標準電波を受信し、時刻を自動的に補正する電波時計
1990年代後半に登場したデジタルカメラは、瞬く間に成長を遂げ、2001年には545億円と出荷金額、2002年には2455万台と台数でも銀塩カメラを抜き、精密機械業界で最大のヒット商品となった。続く2003年も世界の出荷台数は4341万台にまで拡大した。だが、日本メーカーが普及機から1眼レフなど高級機を相次いで投入した結果、早くも過当競争が発生。2004年については出荷台数こそ増加しているものの、各社とも当初の販売計画を下方修正している。いずれ成熟段階に入ることは確実で、ポスト・デジタルカメラをいかに開発するか。次の勝負が始まっている。
ポイント2
キーパーツを自社開発、生産できるか
精密機械業界にとって、今後を左右する最大のポイントの1つは、エレクトロニクス業界との競合だ。現在、最大のヒット商品となったデジタルカメラの場合、キーデバイスはレンズを通して入ってきた光を受け取る役割を果たしているCCD(電荷結合素子)だが、精密機械メーカーで自社技術として保有しているのは富士写真フイルムだけ。他社はソニーなどエレクトロニクスメーカーからキーパーツを調達している。だが、キーパーツを自社生産できないことは、単なる組立加工メーカーと変わらなくなってしまううえ、コスト削減にも限界がある。また、今後の製品開発においてもキーパーツを持つ企業と持たない企業では、差が出てくることになる。他社に先駆けてキーパーツを開発できるかどうか、先行きを占ううえで重要なポイントになる。
ポイント3
エレクトロニクスメーカーとの競争に勝てるか
カメラ、時計はもともと光学とメカの技術を基盤として発展してきた。だが、キヤノンが電子制御機能を利用して自動焦点カメラを開発、他社をリードしたように精密機械もエレクトロニクス技術との関係が不可欠だ。時計もデジタル化の時代が進むなか、カシオ計算機が液晶の技術をもとに参入に成功している。現在、最大のヒット商品となっているデジタルカメラはCCDを持つソニーが一時、シェア1位となるなど、精密機械とエレクトロニクスの境界線はほとんどなくなっている。光学関連の技術ではなお優位性があるものの、企業規模の大きいエレクトロニクスメーカーと伍していくことは簡単ではない。エレクトロニクスメーカーにないオンリーワン技術を持てるかどうかが、大きなポイントになるだろう。