2024年 4月 25日 (木)

長谷川洋三の産業ウォッチ
ロシア経済: サハリン州知事の強気

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「日本の主張する北方諸島問題は、日本とロシアの交流になんら障害になりません。もともと北方諸島はロシアの固有領土なのですから」(I.P.マラホフ ロシア・サハリン州知事)。

   2007年2月28日、東京・大手町の経団連会館で開催された第2回日ロ投資フォーラムのため来日した折、経団連会館14階のフォーラム会場で私との即席インタビューに答えてこう発言した。

   今回の日ロ投資フォーラムは、ロシアのフラトコフ首相の訪日にタイミングをあわせて開催された。ロシア最大のアルミ会社ルサールのオーナーのデリパスカ氏や天然ガス独占企業ガスプロム副社長のアナネンコフ氏、大手自動車セベルスターリ・アフト社長のシェベツォフ氏、大手投資会社メトロポール社長のスリペンチュク氏など、首相に同行したロシアの有力ビジネスマン約90人が出席し、日本の大手商社や自動車メーカーなどの代表と議論をかわした。

   領土問題など政治的テーマでは進展がない部分を、民間の経済対話の盛りあがりでカバーし、日ロの交流を活発にするもくろみだったが、北方領土問題はそもそも存在しないと言い切られては日本側の立場がない。ある大手商社の代表にサハリン州知事の発言をぶつけてみると「領土問題はのどにささったトゲのようなもので、この問題が解決しない限り日ロの経済交流が活発になっても、大きな流れにはならない」と指摘する。

   投資フォーラムの最中、いすゞ自動車の井田義則社長とロシアの大手自動車ウリヤノフスク自動車工場(UAZ)の大株主であるセベルスターリ・アフトがロシアにおける小型トラック合弁生産で合意するなど、日ロの経済交流はロシアにおける市場経済の進展や好調な経済成長に支えられ、資源や一次産品にとどまらず、モノ作り分野に拡大している。しかし、共産党による実質的な国家支配の下では、大きな交流の流れを作るには中国同様政治関係の融和が不可欠だ。フラトコフ首相は日本滞在中、投資フォーラムに出席するだけでなく、大手商社やロシア進出企業首脳と個別に会うなど、精力的に日ロ交流に汗を流したが、日本側関係者はサハリン州知事の発言で、厳しい現実を見せられた形だ。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、日本大学大学院客員教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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