2018年 11月 19日 (月)

ビジネスモデルが崩壊 身を削ぐような合理化が始まる
(連載「新聞崩壊」第10回/ジャーナリスト・河内孝さんに聞く)

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   「新聞業界の危機」を「外野」から指摘する声は多いが、業界内部からの声が目立つことは多くない。そんな中、毎日新聞社OBの河内孝さんが自身の著書「新聞社-破綻したビジネスモデル」で業界の内情を暴露し、注目を集めている。社長室長や中部本社代表、常務取締役(営業・総合メディア担当)などを歴任し、新聞社経営の表と裏を知り尽くしているとも言っていい河内さんに、新聞業界のビジネスモデルや、生き残りのための方策について聞いた。

「部数がすべてを解決する」は一面真実だった

河内さんは「印刷・販売工程を各社で共通化すべき」と話す
河内さんは「印刷・販売工程を各社で共通化すべき」と話す

――ここ数年でこそ、新聞は「衰退している」という言われ方をしますが、かつては「儲かる商売」だと言われてきました。何故儲かったのでしょうか。

河内   まず、国際的に見て、日本の新聞業界の特徴は、人口に比べて発行総部数が非常に多いことです。およそ5000万部と言われていますが、他の先進国に比べると大変な新聞大国です。英国も新聞大国と言われましたが、部数は1700万部しかありません。人口が倍近いアメリカとほぼ同じですからね。

   一方、新聞社の数は日本では100前後なのに対して、米国は1400。国際的に見ると、日本の新聞社は、1社あたりの発行部数が非常に多い。これは、経営としてはすばらしいことで米国の大学教授の中には、「米国の新聞業界も、日本のように寡占化しないと生き残れない」と言う人もいます。ただ、この寡占化構造は、自発的に作り上げられたものではありません。日本でも、1930年代までは、1500~1600ぐらいの新聞社があったんです。それが、戦争遂行のための総動員体制になって「1県1紙政策」が強制され、様々な新聞が合併させられた結果、昭和18(1943)年には56まで減らされてしまった。これは国家統制という面では困りますが、経営の合理化という点で、良いこともあったんです。過当競争がなくなり、ある意味で、安定した。

   戦争が終わっても、寡占化された経営構造は残った。その後の高度経済成長もあって、寡占化しながらマーケットが広がっていった。ある意味、理想的な経営環境だったんですね。そういう意味で、新聞は「儲かる商売」だったんです。

――具体的には、どのような「もうかる仕組み」があったのでしょうか。

河内   新聞社には「部数がすべてを解決する」という言葉もありましたが、これは一面の真実を表しています。高度成長期は、販売店が仮に実際の部数が1000部であったとして、発行本社の方で1200部(200部余計に)送っても、拡張努力でお客さんを増やせた。だから、「押し紙」ではなかった。部数が増えれば、広告単価も上がって、どんどん儲かるような仕組みが出来ていった。

   全国販売店2万1000店で、1兆8000億円の売り上げ、そのうち半分近くを販売管理費に使っている。普通の商売だったら成立しませんよ。それでも何とかなっていたのは、広告売り上げが右肩上がりだったからです。広告代理店からの要請を断るのが大変、そういう夢のような時代があったんです。

――では、その「夢のような時代」は、いつ頃曲がり角を迎えたのでしょうか。

河内   転機は、バブル崩壊の頃ですね。現実には、高度成長が終わった80年代に兆候が見えてきたように思います。広告が、90年代から急落したんです。バブルのピーク時に比べると、半分ぐらいにまで落ち込んでいる。不景気が原因であれば、景気が回復すれば広告も戻るはずなのですが、現実にはそうではない。

   地域でシェアが高い新聞の多くが、広告収入で前年割れの状態が続いています。これは、広告主が「新聞から他媒体に引っ越しちゃった」という現象です。「広告を出したいが、出せない」という訳ではない。

   さらに言うと、2年ほど前に、日経の広告収入が読売に迫るぐらいの勢いで伸びてきたんです。そうなると広告営業上、「300万部と1000万部の違いは何なのか」という話になってきます。つまり、「部数、シェアー=広告単価」という黄金律が消滅してしまったんです。

――それでは、販売収入が落ち込んでいる理由は何でしょうか。

河内   やはり、「新聞離れ」でしょうね。若い人は新聞を読まないし、お年寄りは読んでも購読していない。図書館や公民館なんかで読んでいるんですね。

   この原因は、携帯電話の普及にあるのではないかと思います。今、何だかんだ言って、携帯代金は、1世帯あたり2万円はかかるでしょう。その反面、「家庭で情報収集のためにいくら使いますか」という問いには、「2万円以下」という答えが圧倒的に多い。そうなると、減らされる対象は、月4000円の新聞とNHKにならざるを得ない。世帯別の購読率が下がって、販売収入に響いています。一般家庭だけでみると、購読率は50%を切っている、というデータもあります。

――では、こうした状況に対する有効な手立てはあるのでしょうか。

河内   米国の地方に行くと、プリンティング・デポ(printing depo、小規模印刷所)というものがあって、各社が共同で印刷機を使っています。「各社が出来るだけ遅くニュースを入れようとして、印刷機の取り合いが起こるのではないか」という人もいますが、速報性については、「テレビを見てもらえばいい」という考え方です。

   日本でも同様の動きが起こっていて、販売激戦区の千葉県で、「朝日新聞を読売新聞の工場で印刷する」みたいなことが行われつつある。昔では考えられなかったことです。

   私は、「出版社になりなさい」と言っているんです。一度校了すれば、印刷会社が印刷して、別の会社が流通を担当する。ところが、新聞社は原料を買ってくるところから売るまで、全部やっている。「部数至上主義」時代は上手くいっていたのですが、今後は紙の共同購入まで行くのではないかと思います。さらに、新聞社ごとに配達ルートがあるのがおかしいんです。これを共通化すれば、数百億円単位で合理化できるのではないでしょうか。もっとも共同販売にしますと、押し紙はできませんから販売部数は相当減りますよ。
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