「社説」で好意的な社もある一方、強い疑念を示した社も
以上のように、どの手法であっても、メリット、デメリット両面あり、優劣の判断は簡単ではない。この議論の「ゴール」は6月の「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」。諮問会議は「成長戦略の中心に人材への投資による生産性向上を据える」(安倍首相)というように、「成長」が目的で、より多くの人が高等教育を受けられるように仕組みを見直すなど、教育投資の拡充を目指すという脈絡で財源も議論することになる。諮問会議と並行して、自民党も「人生100年時代の制度設計特命委員会」の初会合を4月13日に開き、議論を始めた。
特命委の委員長を務める茂木敏充・政調会長は教育国債に否定的な立場で、こども保険について重点的に議論するとしている。赤字国債を嫌う財務省の主張にも沿い、一躍、教育財源論議の主役に躍り出た感がある。
マスコミでも、こども保険に好意的な報道も目立つ。社説(産経は主張)で取り上げた全国紙4紙は、教育国債には「費用を教育国債で調達するなら問題だ。国の借金が増え、本来なら現役世代がすべき負担を次世代に押しつけてしまう」(日経4月7日)など、反対・慎重で足並みをそろえる一方、こども保険については、提言の内容のままの実現には疑問視しつつ、「子供・子育て分野に特化した財源を確保する。社会全体で負担を分かち合う。提言の基本的な考え方自体は妥当である」(読売4月11日)と評価し、「子どもの貧困を解消し、出生率を改善するには、高齢者に偏ってきた社会保障給付を抜本的に変える必要がある。『こども保険』を子育て支援の論議の弾みにすべきだ」(毎日4月15日)と、議論の起爆剤として期待する書きぶりが多い。
一方、日経は「保険料という財源が適切か、使途をどうするかといった詰めるべき課題は多い」と疑問視。読売も「必ずしも保険の枠組みにこだわらず、多面的に検討する必要がある」などと釘はさしている。
4紙の中で、特に産経(4月9日)は「増税でやるよりも国民の反発をかわしやすい、といった発想が見え隠れする」「少子化の対策費用を、保険料収入に頼ることは適切とは思えない」と強い疑念を示し、特に「2度にわたり消費税率引き上げを延期した安倍晋三首相の口から、今後の展望が聞けないことだ。それが保険や国債といった、その場しのぎのアイデアを生むことにつながっていないか」と、首相の姿勢も槍玉にあげ、真正面からの増税論議の必要を強調している。