2021年 7月 24日 (土)

『君たちはどう生きるか』の著者・吉野源三郎はどういう人だったか、岩波書店の山口前社長に聞く

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「必要なのは勇気です」

――ところで、『君たち・・・』の主人公コペル君の父は病気で早逝します。あれは戦前、治安維持法などで犠牲になった人のことを示唆しているような気がするのですが・・・。

山口 もちろんそうだと思います。吉野さん自身が治安維持法で一年半刑務所にいたわけですし、いちばんの親友だった哲学者の三木清はのちに獄中死しています。

――印象に残っている吉野さんの言葉は?

山口 「大人になってもまだまだ勉強して、自分を見つけていかなければならない」とか「自分の誤ちを認めることはつらい。しかしその中に人間の立派さもある」とか。
亡くなる3年前に岩波の労働組合機関紙に寄稿していただいた一文には、「岩波書店にも、微力ながらなお果たすべき重要な使命が残っていると言えます。必要なのは勇気です」と書いています。「しかし、その勇気は、今日ではおそらく、私たち一人一人が歴史に対するもたれかかりを断ち切り、孤立をも恐れずに現実を直視し、今日の状況をまともから受けとめる、というところから出発する勇気のほかにないと思われます」と続きます。まあ、大変な文章です。
ジャーナリスティックな人でしたが、残した言葉は、時々の事象の論評ではなく、哲学的な生き方論が多い。だから80年たって『君たちは・・・』が日の目を見て、再び読まれているのかもしれません。

BOOKウォッチ編集部


【山口昭男(やまぐち・あきお)氏プロフィール】

   編集者・評論家。日本ペンクラブ会員。1949年東京生まれ。73年東京都立大学経済学部卒。同年、岩波書店に入社し、雑誌『世界』編集部に配属。88年6月から96年3月まで編集長を務める。その後、編集部長、取締役編集担当、常務を経て、2003年から13年まで代表取締役社長。現在も出版界にかかわりながら、評論活動を続ける。
   共著に『辻井喬=堤清二 文化を創造する文学者』(平凡社)、『メディア学の現在 新訂第2版』(世界思想社)など。

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