福島銀行に業務改善命令の衝撃 金融庁の本当の狙い
ライバル銀行の出身者が後任社長に
福島銀行が5月11日に発表した18年3月期決算(連結)によると、最終損益が30億円の赤字(前期は12億円の黒字)だった。森川英治社長(62)はその責任を取って辞任する。
貸出金利の低下による貸出金利息の減少に加えて、含み損を抱えた投資信託を解約するなどの処理を実施したことが要因。また、業績悪化が懸念される取引先に対する予防的な貸倒引当金を積むなどの、今後発生する可能性のあるコストを前倒しで処理したことで赤字が増えた。
地銀関係者らが顔色を変えたのは、森川社長の後任人事だ。ライバルの東邦銀行の元専務で、とうほう証券社長の加藤容啓氏(61)が就く(6月21日に開催する株主総会後の取締役会で正式決定)。
さらに、福島銀行は森川社長のほか、常務業務本部長の久能敏光氏(61)と営業本部長の高野俊哉氏(60)も辞任するが、新しい執行役員には東邦銀行の執行役員営業本部副部長の宮下恵洋氏(58)が就くという。
そこに追い討ちをかけるように、金融庁の業務改善命令だ。コンプライアンスや法令に違反したわけでもないのに、業務改善命令が発出されるのは異例。元横浜銀行で現在、地域金融機関のアドバイザリーなどを務めている大関暁夫氏は、「そこに金融庁の(再編への)強い意向が感じられます」と話す。
福島県下の勢力図は、東邦銀行が圧倒的だ。少子高齢化による人口減少に悩まされているのは福島県だけではないが、東京電力福島第一原子力発電所の事故後の人口流出が止まらない福島県はとりわけ深刻。さらには復興需要で潤ってきた取引先企業の業績も下向きになってきた。金融庁が描いている再編図は明らかだ。
大関氏は、「(地銀の収益悪化が)マイナス金利の影響はありますが、その『劇薬』が切れたからといって、もう生き残れる状況ではないんだよ、という金融庁のアナウンスではないかと思いますね。裏返せば、地域経済はそれほど疲弊しているということですし、そうそう新しい収益源など見つからない。決断する時間はそれほどないということです」とみている。
いちばん焦っているのは金融庁かもしれない。