2019年 12月 8日 (日)

「『羽生選手』『キモすぎ』で記事書いて」 氾濫するトレンドブログ求人、仲介業者も対応強化へ

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   フィギュアスケートの羽生結弦選手を批判するコメントを書き込んだら報酬――。こんな真偽不明の求人がSNSで拡散されている。

   はたして実在するのか。J-CASTニュースで真相を探ってみるも、募集主は特定できなかった。しかしこれとは別に、ネットで企業や個人が仕事を不特定多数に発注できる「クラウドソーシング」サイトで、羽生選手を含む著名人を、誹謗中傷するような記事が大量に募集されている実態も見えてきた。

  • 羽生選手
    羽生選手

「羽生バイト」は世論誘導が狙い?

   求人情報は2019年3月中旬、ツイッターで広く拡散された。あるユーザーが求人募集ページと応募後に送られてきた業務内容が記されたメールとされるもののキャプチャーを投稿した。

   それによると、羽生選手に関する記事に批判的な意見をネット上に書き込み、一方でフィギュアスケートの有名選手3人の実名を挙げ、彼らに好意的な意見を書くよう依頼している。

   目的については「現在のフィギュア界はとにかく羽生の人気が高い為、AとBとC(原文ではいずれも実名)のそれぞれのファンが結束する必要があるのです」とあり、世論誘導が狙いとみられる。

   J-CASTニュースで投稿者に募集主を質すが最終的に回答は得られず、前述の4選手の所属企業と日本スケート連盟にも聞くと、唯一回答があった羽生選手の所属先である全日本空輸(ANA)は把握していないという。結局、この「バイト」そのものについては、その実在の有無も含め、実態を明らかにすることはできなかった。

羽生選手に関する別の求人を発見

   しかし複数の求人サイトを調べると、クラウドソーシング大手の「クラウドワークス」で、羽生選手に関する記事作成の募集があった。

   募集要項では、「羽生結弦の以下どれかについて自由に書いてください」とし、見出し・本文に「キモすぎ」「嫌い」「ナルシスト」のいずれかを含むよう求めている。

   プロフィールによれば募集主は複数のサイト運営者だという。過去の募集を見ると2500件以上の実績があり、芸能人に関する記事の執筆が多数ある。

   先の羽生選手の求人は18年2月に募集があり、10件(1件41円)の受注が成立していた。

   そのほか同サイトで「羽生結弦」と調べると、下記のような記事執筆の募集が100件以上見つかった(終了分も含む)。

「『羽生結弦』に関する内容で記事作成をお願いします。文章として成り立っていれば、評判、レビュー、批判、自身の意見何でもOKです」
「あなたの、『羽生結弦』のイメージ、秘密、直近、今後の行方の予想 を感想や記事にしてください」

記事は「トレンドブログ」に掲載?

   クラウドワークスでは記事執筆の仕事は人気ジャンルだ。同サイトの仕事カテゴリーの一つである「ブログ記事作成」は11万件以上の募集(終了分も含む)があり、アイドルグループ「AKB48」や女優の広瀬すずさん、タレントのマツコ・デラックスさんなど著名人に関する募集が多い。

   実際にいくつか応募してみると、「〇〇の学歴!大学・高校・中学校はどこ?嫁は〇〇で子供は?」(伏せ字は編集部)といったように記事の見出しを指定して依頼するのが主流のようだ。

「ネット情報だけではなく、自分の感想や意見なども盛り込みオリジナリティーを出す」
「検索エンジンからの流入を増やすため、芸能人の名前をヤフーで検索したときに表示される虫眼鏡キーワード(検索数が多い関連語)を本文で網羅する」
「写真はネットに公開された画像を使う。ダウンロードはせず、スクリーンショットを使う」

といった注意事項も伝えられた。

   応募した仕事の一つでは、運営するブログのコンテンツ管理システム(CMS)にログインし、直接本文を打ち込むケースもあった。

   同ブログの過去記事を見ると、著名人の噂話やスキャンダルを中心に扱っていた。こうしたサイトは「トレンドブログ(トレンドアフィリエイト)」と呼ばれ、アクセス数を増やして広告収入を得ることを目的とする。

過去には人種差別思想に基づくブログの記事募集も

   クラウドソーシングサイトをめぐっては、過去に騒動が起きている。

   DeNA(ディー・エヌ・エー)が運営する「キュレーション(まとめ)サイト」に著作権・薬機法違反や不正確な内容の記事が見つかり閉鎖に追い込まれた問題では、クラウドソーシングサイトを通じて多くの外部ライターが関わっていた。

   DeNAが委託した第三者委員会の調査報告書では、同社の発注方法やチェック体制に不備があったとしつつ、「専門的知見を有しないクラウド執筆ライターにおいて、複数のウェブサイトに掲載された記事の記載を適当につなぎ合わせて記事を作成するなどといったことは、記事内容の正確性を担保する上で、大いに問題があった」と指摘していた。

   また17年9月には、人種差別の扇動や特定政党の不支持を呼びかける政治系ブログの記事募集がクラウドワークスで見つかり、同じくクラウドソーシング大手のランサーズでも「政治系サイトのコメント欄への書き込み。保守系の思想を持っている方」と題した募集があり批判を集めた。両社はその後、差別や特定政党に関連する募集の対応を強化すると発表した。

羽生選手の記事は「不適切であると判断」

   前述した羽生選手への誹謗中傷ともとれる記事の募集は問題ないのか。

   求人を掲載したクラウドワークスの利用ガイドラインでは、「プライバシー権、肖像権、名誉、信用その他他人の権利を侵害し、損害を与える」仕事の募集を禁止している。

   同社広報は取材に「今回の内容が誹謗中傷を目的としたものなのか否かに関しては必ずしも言えない可能性もございますが、多くのユーザー様にとって不快な内容であったこという事実を重く受け止め、ガイドラインに則し掲載されていることは不適切であると判断」し、掲載を止めたと回答。

   広報によれば、求人は掲載前後にAI(人工知能)や目視などでガイドラインに違反していないか監視しているという。しかし、「芸能人に関するブログ記事作成のお仕事です」と内容があいまいな求人もあり、記者が応募した仕事の中にはサイト内のフォームではなく、外部のチャットツールで具体的な指示が送られるケースもあった。

   その点については「契約後、お仕事を進めていく上でのコミュニケーション手段については現在、依頼者と受注者の二者間でご決定いただいております。不適切な指示に関してはサービス外にてどのようなやりとりが行われているかや事実を、公平かつ正確に判断することは難しいため、基本的には二者間でご解決(契約の辞退、第三者機関への相談など)をお願いしておりますが、サービス外のやりとりでも、発注者側が明らかに規約違反・ガイドライン違反を行っている事実が確認できた場合、速やかに掲載中断、悪質な場合はアカウント凍結等の利用制限を行っています」とした。

   今回の件を踏まえ、「監視対象項目を見直し、AIによる検出対象ならびにユーザーサポートチームによる目視チェック範囲を拡大」すると明かし、詳細については「具体的な対応策や基準をお伝えすることによる、違反・悪質な仕事のすり抜けリスクを最小限に留めたく、お伝えを差し控えさせていただきます」とコメントするにとどめた。

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