2020年 11月 25日 (水)

保阪正康の「不可視の視点」
明治維新150年でふり返る近代日本(40)
軍人勅諭と戦陣訓――明治と昭和の戦時観の違い(その1)

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明治、大正、昭和の初めの陸海軍の教典に

   この中で、軍人は政治に関わってはならないというのは山県の意向が強く反映している。つまり不平士族の政府攻撃、自由民権論者の言説に惑わされてはいけないというのである。この一節は、昭和に入っての青年将校の時代には、逆に政治の側の世論など気にかける必要はないとの方向で理解されて物議を醸し出す。しかしともかく、軍人勅諭は明治、大正、昭和の初期の陸海軍の教典になっていった。

   新兵は必ず暗記するように命じられ、暗記のできない兵士には制裁が待っていた。無論明治期の教育も充分に行き渡っていないときは、文字も充分に読めない兵士には口移しで教えたと言われているほどであった。しかし軍人勅諭を読んでもわかるように、軍内では皇国史観そのものが日本社会の教育制度の成立以前にすでに進められていたという事実である。このことは近代日本が軍事主体であるだけでなく、すでに軍事は神話と合体する精神基盤を有していたという点に特徴をもつ。

   この矛盾が実は、昭和の戦陣訓の持つ非合理性の因となっている。そこを分析しなければならない。(第41回に続く)




プロフィール
保阪正康(ほさか・まさやす)
1939(昭和14)年北海道生まれ。ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。『東條英機と天皇の時代』『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『ナショナリズムの昭和』(和辻哲郎文化賞)、『昭和陸軍の研究(上下)』、『昭和史の大河を往く』シリーズ、『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)『天皇陛下「生前退位」への想い』(新潮社)など著書多数。2004年に菊池寛賞受賞。

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