2020年 8月 15日 (土)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(4) 「自粛」が「萎縮」になってはいないか 今こそ専門家は発信を!

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情報とメディアのありかた

   そうした話題の後、5年前まで3期札幌市長を務めた弁護士の上田文雄さんが登場した。

「札幌の医療態勢は十分揃っていて、在任中は、医療崩壊の危機に直面するようなことはなかった。行政の在り方で最も大切なのは、具体的なエビデンスを示し、いかに市民に情報を提供し、共有するかだろう。政府は専門家集団の意見を聞くというが、それ以外の専門家の批判を聞いていない。きちんと批判し合い、ブレーキをかけながら意見を闘わせることができていない」

   ここで元北海道新聞記者の高田正基さんが発言した。

「今の社会の空気は不穏で、『100%我慢を』という雰囲気が漂っている。専修大教授の山田健太教授が、『命も自由も守ろう』と呼びかけたが、その通りだと思う。今は政権の悪口を言ったり、批判することをためらう空気があり、野党も有権者の支持を失うことを恐れ、補正予算でも安易に賛成に回っている。相互監視、同調圧力が強まり、批判を封じるような空気だ。かつて『決められない政治』が批判されたが、今は何でも勝手に決めることが当然視されている」

   ここで元毎日新聞の山田寿彦さんが上田さんに質問した。

「札幌雪まつり直前の今年1月30日、WHO(世界保健機関)が緊急宣言を出した。例年より少なかったとはいえ2百万人の人出があった。上田さんが市長だったら、雪まつりをやっていたろうか」

   これには上田さんも、たじたじの返事だった。

「ずっと続けてきて、風物詩になっている催しを、直前になって中止するという判断はものすごく難しい」

   塚本さんが医療の立場から意見を述べた。

「あの時点で中止という判断は難しいと思う。会場が屋外だったし、どう感染するか、ウイルスの特性もまだよくつかめていなかった」

   山田さんは、上田さんが指摘した「専門家集団」についても言及した。

「メディアをウォッチしているつもりだが、かなりいい加減な専門家もいる。政府の専門家会議も国立感染症研究所が中心で、臨床の専門家がいない。臨床現場を知らない人たちが司令塔になっているのではないか」

   ここで司会の吉岡さんから指名され、私が発言した。

「この間の動きで、後から検証しなくてはならない点が三つあると思う。第一は1月31日に政府が湖北省滞在者に限って入国を拒否したこと。2月2日に米国が『過去2週間に中国に滞在した人』を対象にしたことに比べ、明らかに狭かった。これは、習近平国家主席を国賓に迎えるという政治日程に左右されたのでは、という見方もできる。第二は東京五輪延期の日程が決まるまで、感染の重大さが表面化しなかったのはなぜか、ということ。そしてそれにも関連するが、第三の論点は、PCR検査を絞り込んできたことだ。当初は症状のある人だけを検査してクラスターを追跡し、医療現場を守るという建前だったが、市中感染が広がって経路をたどれなくなった時点で、戦略転換すべきではなかったのか、という問題だ。専門家についていうと、上田さんがおっしゃるように、専門家同士が議論する場がない。テレビも、コメンテーターが特定の専門家の話を聞くという一方向で、しかも登場する専門家ごとに言っていることが異なり、市民はどれが本当なのか戸惑うばかりだ。こうした時こそ、メディアは議論の場を提供し、民主主義が機能するように目を光らせるべきではないだろうか」

   往住さんはメディアの問題について、さらにこう続けた。

「NHKは指定公共機関になって専門家会議にも深く入り込んでいるが、従軍記者のように内部と一体化し、政権批判をしなくなる懸念もある。安倍政権はそれ以前から、報道を批判し、メディアに自制を求める傾向があった。今回、30万円給付がなくなり、国民に一律10万円給付の政策に方針転換したのも、国民の不満があったからだ。新聞やテレビは、SNSに象徴される国民の声と連携しないと、やっていけないということだろう」

   今の言論状況について、弁護士の今野さんがこう話した。

「議論の場がなく、情報が一方通行になっている。非常時には配慮して、国家や行政に批判の目を向けないという空気だ。内閣が法律を超えたことをしても、検証がなされない。根拠は、議論をするからこそ、できるものだ。数字の出し方ひとつとっても、意見を闘わせ、科学的知見を踏まえる必要がある。急がねばならない部分はありつつ、丁寧に議論することが大事だろう」
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