2024年 4月 27日 (土)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(29) 米国はバイデン政権下で分断を克服できるか

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現代と19世紀末とに共通するのは「移民排斥」

   もう一点、古矢さんが指摘する19世紀末と現代の共通点は「移民排斥」の動きだ。

   1890年から1900年代にかけての「世紀の変わり目」に、製造業が勃興するアメリカには移民の波が押し寄せ、外国人生まれの比率は13~14%に達した。東海岸にはユダヤ系、ロシア系、東南欧系の移民が多く、西海岸には鉄道や鉱山で働く中国系、次いで日系の移民が押し寄せ、労働集約型の農法で高い生産性をあげた。

   排日機運が高まり、1913年にはカリフォルニア州外国土地法が成立した。これは公民権獲得資格がない外国人に土地所有や3年以上の土地の賃借を禁止する法律で、明示はしていないが事実上、日系移民を排斥する法律だった。当時は西海岸が移民排外の前線で、その動きが南部の黒人差別や東部のアーリア系反移民運動と結びついていた。

   これは、反ヒスパニックやイスラム排外運動が反黒人運動と結びつき、白人至上主義につながる現代の動きに重なって見える、と古矢さんはいう。

「今回の選挙は様々なアメリカ社会の分断を映し出している。経済格差、人種、文化とその分断は根が深く、連邦政府の政権が変わるだけで、一気に解決できるというものではない」

   トランプ政権で特徴的だったのは、独断的な人事で国防・国務の閣僚や高官を次々に解任・更迭する一方で、経済・金融関係の補佐官や閣僚はあまり変えなかったことだ、と古矢さんは指摘する。任期を全うしたのはスティーブン・ムニューシン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ピーター・ナバロ国家通商会議委員長ら金融エリートたちだった。

「最も不安定なトランプ政権の下で、最も安定していたのはウォール・ストリート出身の金融エリートたちでした。バイデン次期大統領の閣僚候補指名を見ていると、財務長官に元連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャネット・イエレンを充てるなど、やはり金融エリートを重用する傾向がみられる。サンダースやウォーレンが求めるような富裕層への課税や再分配機能の強化に踏み込めるのかどうか、はなはだ疑問がある」

   もともとトランプ政権がここまで持ちこたえたのはオバマ政権2期目で失業率が3%台にまで落ち、上向きに転じた経済環境を引き継いだからだった。今回のコロナ禍のような惨事があっても、金融緩和と連邦政府の財政出動で金融システムと産業を守れば、企業の内部留保はふくらみ、富裕層はより多くの給与や配当を受け取って一層豊かになる。ナオミ・クラインの言う「ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)」である。

「そうした惨事便乗型の資本主義はいけない、というのがサンダースやウォーレンら左派の考えでしょう。トランプ政権からバイデン政権になって、その方向に変化が起きるのか。そこに注目したい」
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