2024年 4月 26日 (金)

外岡秀俊の「コロナ21世紀の問い」(42)政治学者、宮本太郎氏と考える福祉のこれから

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「ベーシックインカム」論の問題点

   そこで近年注目を集めるようになったのが「ベーシックインカム」論だ。

   これは、所得調査をしたり、就労を求めたりすることなく、無条件に、すべての個人に定期的に現金給付をする仕組みを指す。つまり、「福祉から就労へ」と誘導する「社会的投資」とは対照的に、就労や所得の条件とは切り離して一定の現金給付をするという考え方だ。多くの論者は、生活保護や様々な手当、年金などをこれに一本化するという。福祉に関わる膨大な行政コストを削って給付に回せば、より合理的だ、という考えだ。

   だがこれには、既存の福祉制度を解体して一本化するという「新自由主義」的な立場もあれば、累進課税で財源を調達して再分配を図るという「社会民主主義」的な立場もあり、同一に論じることはできない。そもそも、人の暮らしを、国のある一つの制度にそこまで委ねてもいいのか、それで安全なのかという疑問もある。

   これとは別に、「ベーシックサービス」という考え方もある。ロンドン大の社会政策学者アンナ・コートらが提唱した考えだ。

   これは、「すべての人が、負担能力のいかんにかかわらず、ニーズに応じた基本的で十分なサービスを受けられる」ことを目指す考えだ。ここに言う「サービス」とは、医療、教育、ケア、住宅、輸送、デジタルアクセスなどの「公共サービス」を指す。

   だがこの議論にしても、一人ひとり異なる多様なニーズの中から、どのニーズを「普遍的」なニーズとして切り出せるのか、具体論になると極めてあいまいだ。ビジョンとしては総論賛成でも、具体的な施策に落とし込むには議論が百出しそうなアイデアだろう。

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