2024年 4月 25日 (木)

外岡秀俊の「コロナ21世紀の問い」(42)政治学者、宮本太郎氏と考える福祉のこれから

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限界を迎えた日本型福祉

   だがこうした「雇用を配る」ことを基本とした日本型福祉のシステムは、間もなく壁にぶつかる。早くも1980年代には第二次臨時調査会(第二臨調)では福祉国家批判を背に政府支出の縮小が本格的に打ち出された。中曽根康弘政権(1982~87年)は、個人の自立や自助を強調して国民負担率の抑制など新自由主義的な政策を前面に打ち出した。生活保護の給付抑制や生活扶助基準の見直しが進められたのもこの時期だ。

   しかし、宮本さんの著書によると、こうした新自由主義的な潮流に対し、それとは異なる福祉理念を刷新する動きが、当時の厚生省や研究者、福祉団体などから生まれた。これが1986年の社会福祉基本構想懇談会による「社会福祉改革の基本構想」や、1995年の社会保障制度審議会「社会保障体制の再構築(勧告)」などの構想にまとめられていく。

   これは、新自由主義的な道を目指すのではなく、従来の福祉体制への回帰を求めるのでもなく、新たにビジョンを刷新し、時代の激動に見合った道を模索するという構想だった。

   その刷新の第一は、従来の「救貧的・防貧的な社会福祉」から、「普遍的・一般的な社会福祉」へ転換し、福祉の対象を広げる方向性だった。これは北欧型福祉にもつながる理念の刷新を意味する。

   第二の方向性は、それまでの措置制度を見直し、公的部門と並んで民間部門を活用し、利用者によるサービス選択を可能にする制度への移行を目指した。これは公的財源を基に「準市場型制度」を導入することを意味した。

   そして第三は、一部の人々の救済や保護ではなく、多くの人々の連帯と自立(自律)を支援するという考え方だ。

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