2021年 9月 22日 (水)

三菱自動車×満寿屋商店「我慢しないで、楽しまないと!」 異業種対談で見えた「環境にやさしく」を続けるヒケツ

   悪路をものともしない4WD(四輪駆動)と、環境に配慮したEV(電気自動車)の技術を掛け合わせた、三菱自動車のPHEV(プラグインハイブリッドEV)。2013年には「アウトランダーPHEV」が、世界初のSUV(スポーツ用多目的車)のPHEVとして、日本で発売された。

   そのアウトランダーPHEVが、2021年7月7日、北海道帯広市で開催された、小麦に焦点を当てたイベント「北海道小麦キャンプ2021 in 十勝」で、電力を供給する車として使用された。提案したのは、実行委員長の杉山雅則さん(45)。帯広市に本店を構える老舗パン屋・満寿屋商店の4代目社長だ。

   なぜ杉山さんはPHEVを使用しようと思ったのか――。未来を見据えて電動車両を開発する三菱自動車、そして十勝の地産地消にこだわる満寿屋商店が、環境に対して抱く想いとは。

  • 満寿屋商店・杉山雅則さん(写真左)、三菱自動車・百瀬信夫さん(同右)。あいだには2020年12月発売の「エクリプス クロス(PHEVモデル)」(一部加工)
    満寿屋商店・杉山雅則さん(写真左)、三菱自動車・百瀬信夫さん(同右)。あいだには2020年12月発売の「エクリプス クロス(PHEVモデル)」(一部加工)
  • 杉山さんが父から受け継いだモーリスの車。業者に頼んで電動化した「コンバートEV」だ
    杉山さんが父から受け継いだモーリスの車。業者に頼んで電動化した「コンバートEV」だ
  • 満寿屋商店・杉山雅則さん(写真左)、三菱自動車・百瀬信夫さん(同右)。あいだには2020年12月発売の「エクリプス クロス(PHEVモデル)」(一部加工)
  • 杉山さんが父から受け継いだモーリスの車。業者に頼んで電動化した「コンバートEV」だ

「最初の20年は、とにかく性能を突き詰めた」

   今回、三菱自動車でアウトランダーPHEVの先行開発責任者を務めた百瀬信夫さん(58)と、満寿屋商店の杉山さんによる異業種対談が実現。単独ベーカリーとしては日本一の敷地面積を誇るという、満寿屋商店の店舗・麦音(むぎおと、帯広市)で話を伺った。

東京ドームのグラウンド面積に匹敵する「麦音」で対談
東京ドームのグラウンド面積に匹敵する「麦音」で対談(一部加工)

――両社の出会いは、2018年11月、当時の三菱自動車本社で行われたイベント「とかちおとふけマルシェ」がきっかけでした。満寿屋商店は三菱自動車のSUV「エクリプス クロス」をモチーフにしたパンを提供。それ以来、長く関係が続いていますが、お二人が「自動車」と「パン」に興味を持ったきっかけを教えてください。

百瀬信夫さん(以下、百瀬):昔から自動車とアウトドアが好きで、学生時代は山の中を車で走り回っていました。就職先に三菱自動車を選んだのは、「どうせなら自然の中で走り回れる車がいいな」と思ったからです。当時から三菱自動車はモータースポーツのラリーに参戦するほか、パジェロはじめ山道を走る自動車を多く製造していましたので。
杉山雅則さん(以下、杉山):私は20歳くらいまで、パン屋になる気がまったくなかったですね。あまりにもパン屋が身近すぎて、仕事として考えていなかったです。大学は、百瀬さんのような技術者に憧れて工学部に進学しました。
しかし、自炊を始めて自分で食材を選ぶようになると、急に食べ物の味が気になりだして。それである時、パン屋さんでアルバイトを始めました。パンを焼く係だったんですが、焼きたてのパンを持っていくと、お客さんがとても楽しそうに買い物をしていて。「実家の商売って、良いことをやっているんだな」と思ったものです(笑)。

――杉山さんも、若い頃は機械やモノづくりに興味をお持ちだったんですね。若き日のパン屋さんでの体験が、現在の仕事につながっているんですね。これまで、どのような想いを持って取り組んできましたか。

杉山:「満寿屋商店」創業者の祖父は、地元との共存共栄をすごく大切にしていました。十勝は日本で最大級の農業地帯なので、農家さんは農産物の生産者というだけでなく、重要なお得意様でもあります。農産物をおいしいパンにして、農家さんに食べて喜んでもらうという「地産地消」ですね。味付けも、素材そのものの味を感じられるような優しい味になるように努めています。

※満寿屋商店は1950年に帯広で創業。音更町、芽室町、そして東京と、着実に規模を拡大し、現在は道内に6店舗を展開する。地元の食材を使った「地産地消」にこだわり、1990年から十勝産小麦を使ったパン作りを開始。2012年には、全店で「十勝産小麦100%」のパンを提供することに成功した。

百瀬:先ほどパンを食べましたが、本当に優しい味ですよね。僕の「自動車づくり」に対するスタンスをお話しすると、杉山さんのような広い視点で考えるというより、一人のエンジニアとして自分が欲しいものを、入社して最初の20年は追求してきました。とにかく自分たちが乗っていて楽しく、ある意味道具なので扱いやすい自動車です。なぜこの性能の仕組みはこうなんだろうとか、自分の思い通りに走らないのはなぜだろうとか、そういうことを突き詰めて直していくのが楽しかったです。
三菱自動車の百瀬さん。「最初の20年はとにかく性能を突き詰めた」と話す(一部加工)
三菱自動車の百瀬さん。「最初の20年はとにかく性能を突き詰めた」と話す(一部加工)

――杉山さんはパンの「地産地消」を、百瀬さんは自動車の「性能」を突きつめていたんですね。お二人の共通点として、広い意味で「モノづくり」に向き合ってきたのだと思います。これまで、お二人はどのような目標や興味を持っていましたか。

杉山:こだわりは、十勝産小麦を100%使ったパン作りです。これには、深い理由があります。十勝は日本一の小麦の生産地ですが、父が2代目の社長だったころは、ほぼ100%外国産小麦を使っていました。十勝産小麦でのパン作りを始めても、外国産とは味・性質が違うこと、そもそも原料の確保が難しかったからです。父と3代目である母はとても苦労していました。最後には母が「亡くなった父の遺言だから、絶対実現してください」とみんなに言って、なんとか続けてきたという感じでした。
私が4代目になるころには小麦の品種改良が進み、2012年には全店すべてのパンを十勝産小麦100%で提供できるようになったんですよ。
百瀬:僕はエンジニアを20年務めたあと、2008年から世界初の量産型電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」の開発プロジェクトに携わりました。その中で、自動車は環境に対してとてもネガティブなモノであると感じたんです。どうしたらこの環境問題を、自動車でうまく解決できるのかと、スイッチが入ったんですよね。エンジニアのころは性能ばかりを求めていましたが、環境にやさしい電力をどう使うべきか、より長距離を走るには何をすべきか、搭載しているバッテリーをもっと活用できないのか、という考えに変わっていきました。
姉妹サイト
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック