「豊の国とは」。この質問に答えるのは難しい。その手掛かりを求めて、中央大学の石川晃弘名誉教授(産業社会学)がOECD諸国の統計を比較してみた。2025年2月に同大学紀要に発表した論文で、「国民一人当たり総生産(GDP)、総所得(GNI)で高く豊かな国なのに、貧困率が目立って高いのは唯一、米国だった」と指摘している。
失業率の低さでは日本は2位
石川名誉教授は観察の対象として、経済指標などが多く公開されている経済開発協力機構(OECD)加盟国から37か国を選び、ネット上から統計数値を集めた。国民一人当たりの経済的豊かさと、その国の社会病理現象との相関性を探ってみた。その結果の一部がこの表である。
GDPの順位で見ると、1位はアイルランド、2位スイス、3位米国、4位デンマーク、5位オランダとなる。日本は17位だ。最下位のほうには、37位ブラジル、36位メキシコ、35位コスタリカ。中南米の国々である。
失業率が低い順では、1位がスイス、2位日本、3位チェコ。貧困率が低い順では、1位チェコ、2位デンマーク、3位ハンガリーとなる。
殺人率が低い国では、1位スペイン、2位スイス、3位韓国。自殺率が低いのは、1位ギリシャ、2位トルコ、3位イスラエル。