「外国人は逮捕されても不起訴になりやすい」は本当か 埼玉のひき逃げ事件も...データから見えた事実

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不起訴の理由開示は義務づけられていない

   ところで、「不起訴処分」とはどういうものなのだろうか。

   そもそも不起訴処分=無罪とは限らない。検察官が裁判所に起訴しないことを決めることで、前科はつかないものの、捜査対象となった前歴は残る。

   ひとえに不起訴といっても「法令違反の疑いなし」という判断もあれば、証拠が不足で立証困難な「嫌疑不十分」、罪は成立するものの、再犯可能性がない「起訴猶予」、被害者の告訴がない「不告訴」など、内容はさまざまだ。

   加えて、日本の検察官法や刑事訴訟法では、不起訴処分時に理由開示を義務づける規定はない。

   理由を開示しないのは、被疑者や被害者のプライバシー保護、捜査情報の保全など、事件の種類によって理由も多岐にわたるからだ。

   これらは当然、被疑者の国籍に限らない。日本の制度上、普通のことなのだ。つまり、「不起訴になった理由が明かされないからといって、不公平な判断が下された」という結論には直結しないのである。

   野口健氏は先に挙げた意見に加え、「その結果、外国人に対する偏見や差別に繋がりかねない。また真面目に日本で生活をしている外国人まで偏見が及ぶ可能性も」と続けている。

   たしかに、『犯罪白書』によれば、令和6年度の刑法犯検挙人員の総数(18万3269人)に占める外国人の比率はわずか5.3%に過ぎない。

   一部の事件に目を奪われるだけでなく、全体の傾向や制度の背景を踏まえ、先入観を避けた冷静な判断を社会全体で共有することが求められている。

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