ストレートがあってこその変化球
ここから、田中将大がメジャーで見せたピッチングをデータで検証していく。
田中はヤンキース移籍2年目の2015年に右肘の尺側側副靭帯を断裂し、約2か月間故障者リスト入り。その際、手術は選ばず、肘に負担の少ない投球スタイルを模索することになった。
それまでの150㎞/h近いストレートと縦に割れるスライダーを軸にしたパワーピッチングから、ツーシームなど多彩な球種を使う技巧派スタイルへ転向し、その年も含めメジャーで6年連続二桁勝利を挙げた。
対戦打者に占める与四球の割合(四球率=四球/対戦打席数)はメジャー通算4.8%と、理想とされる5%以下を維持しており、安定した制球力があったことがわかる。
しかし、楽天時代の2023年には6%を超え、被OPS(出塁率+長打率)も.800となり、ためたランナーを長打で返される傾向が見られた。
さらに、ストレートの平均球速も前年の146.6㎞/hから144.8㎞/hへと低下。
技巧派とはいえ、ストレートがあってこその変化球である。
かつて田中が日本にいた2012年のプロ野球平均球速は約140.5㎞/hだったが、10年後の2022年には約146㎞/hと「高速化」が進んでおり、厳しい状況といえる。