「桜島噴火」から大地震に置き換わった都市伝説
「何かが起きるかもしれない」という予知的な都市伝説は、ウェブ時代からSNS時代に突入して以降、急速かつ広範囲に拡散されるようになった。
たとえば、「トカラの法則」は2016年頃からSNSを中心に広まった都市伝説だが、もともとは「桜島の噴火」が起こる法則として知られていたものが、いつしか「大地震」に置き換えられていったのである。
また、先述した中国大使館の「慎重に」というメッセージは、25年4月14日に「南海トラフなどに関する新たな情報」が発表された際に、一般的な注意喚起として出されたもので、「7月5日に大地震が来る」からではない。情報が伝達される中で、「4月の発表」であることが省かれて伝えられたのである。
「7月5日」を予言したとされる、たつき氏の『私が見た未来』の情報が再燃したのも、SNSが発端だった。
そもそも東日本大震災を予言したとしてウェブで話題になったころ、たつき氏はすでに漫画家を引退していた。
だが、たつき氏をかたるなりすましがSNSを中心に「予言」を展開し、『私が見た未来』の復刻の動きが出た際に、本物のたつき氏が気づき、出版社に申し出たのだ。
最終的に、本人が『完全版』を出すことになったが、本人の意向は十分に反映されないまま発行されてしまったという。
今年6月に出版された自伝『天使の遺言』で、たつき氏はその後悔を述べ、「夢を見た日=何かが起きる日というわけではない」と釈明している。
情報社会において、とくに防災情報に関するリテラシーは重要である。7月5日を過ぎても、今回の騒動を通じて「なぜ信じられたのか」「何が人々の行動を変えたのか」を検証する必要があるだろう。