靖国神社「公式参拝」は、なぜ1回しか行われなかったのか 「中曽根文書」会見記録とオフレコメモから読み解く一部始終

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「検討中」連呼する官房長官、記者「成田を飛び立つまで検討されるんですか」

   だが、9月下旬には北京大学で中曽根政権を批判するデモが発生し、事態は一変。10月19日から訪米が控える中で、10月17~19日に予定されていた秋の例大祭に中曽根氏が参拝するか焦点になった。

   表向きは、藤波氏はギリギリまで記者会見で「検討中」を連呼。数なくとも10月2日、7日、15日、16日、17日、18日の会見で「検討中」と発言している。特に10月16日には、いらだった記者が

「いつまで検討されるんですか?成田を飛び立つまで検討されるんですか」

という聞き方をしたが(実際には中曽根氏は羽田空港から出発)、

「いつまでという事になるかは分かりませんが、まだ検討を致しております」

という、のれんに腕押しの答弁だった。

   ただ、舞台裏では、藤波氏は厳しい見通しを記者に明かしていた。「10/2 16:20 藤波 コンダン」のメモでは、藤波氏とみられる人物が、参拝について「検討するということであり、いま総合的に検討している」としながら、中国の反応については「厳しいとみています」。「いろいろやっているが効果はあがっているか」という問いには、いら立ちをにじませた。

「いやあがっていない。(外ム省の)アジア局長を呼んで効果があがるように、早くやれと言った」

   安倍晋太郎外相が訪中している最中の「10/11 16:30 藤波」のメモでも、事態が好転している様子は読み取れない。

「厳しい、ということでしょうね。?もよく話をしてくるとは言っていましたがね。例大祭に行く行かないは、こっちが決めることですが」

   結局中曽根氏は、靖国に行かないまま訪米。藤波氏は、中曽根氏が米国に向けて出発した直後の10月19日午前の会見で、参拝見送りの理由を

「丁度、臨時国会代表質問の時期に当たっておりまして、その対応や或いは本会議への準備や、更にせまって来ておりましたアメリカへの訪問の準備に時間を食われてきておりまして、総合的に検討致しました結果」

と説明した。「総合的に」に中国への配慮は含まれるのか、という質問には

「この公式参拝の意義を国の内外に正しく理解をしてもらうようにという事を申し上げて来ております」

と応じた。

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