2025年8月25日、香港証券取引所は中国恒大集団(Evergrande Group)の株式上場を廃止すると発表した。
これは、中国の不動産危機が依然として長いトンネルから抜け出せていないことを鮮明に示した。そしてさらに、日本へ大挙してやって来る中国人観光客への影響も――。
中国にとって一企業の経営破綻にとどまらない恒大問題
恒大は2000年代、中国の都市化ブームを背景に急成長した。
地方都市で低価格の土地を取得し、着工前販売による資金回転を最大化しつつ、巨大プロジェクトを次々と立ち上げていった。
2009年には香港市場で巨額の資金を調達し、不動産事業からサッカークラブ、電気自動車まで事業を多角化。
しかし、この成長モデルは「借入による拡大」を前提としており、2020年に中国政府が導入した不動産業者の借入制限策「三条紅線」により資金繰りが急速に悪化した。
2021年には社債返済が不能となり、2024年1月には香港高裁から清算命令を受けた。
最終的な債務総額は3000億ドル(約49兆円)超に達したが、清算による資産売却額はわずか約2億5500万ドルと見込まれ、回収率は1%未満と推定される。
不動産が中国GDP(国内総生産)の約4分の1を占め、家計資産の約7割が住宅という経済構造の中で、資産価格の下落は消費の冷え込みを招く。
恒大の破綻は、一企業の経営失敗にとどまらず、中国が抱える構造的リスクを映し出す象徴的な「事件」となったのである。