2024年 4月 25日 (木)

高倉健さんに話を聞いた青山の喫茶店...若造相手でも嫌な顔せず珈琲飲みながら1時間

   今週最大の話題は安倍首相の大義なき解散ではない。高倉健の突然の死である。享年83。不足ないといってもいい歳だが、われわれ70年安保世代は、健さんが年老いて首の周りのシワが幾重になろうとも、彼の後ろ姿に自分の青春時代の残像を見ていたのだから、ショックは大きかった。

   高倉健は昭和の男だった。彼の生涯を書き連ねる気はないが、私のささやかな健さんとの思い出について書いてみたい。私が編集者になってどうしても会いたい人が3人いた。吉永小百合と長嶋茂雄、そして高倉健である。小百合(こんないい方をしてゴメン!)とは残念ながら何度かすれ違っただけだが、長嶋さんとは食事をしたり対談に出てもらったことがある。健さんとは2度取材で会うことができた。

   はじめは公開される映画についてのインタビューだったが、若造の私の拙い質問にも嫌な顔をせず答えてくれた。憧れの人に会えた緊張感で何を話したかは覚えていないが、背筋がピンと張った姿勢のよさと礼儀正しさは強く印象に残っている。

   2度目は青山にあった喫茶店。珈琲がうまく、健さんがときどき立ち寄る店としても知られていた。何の取材だったか忘れたが、表通りの見える席で二人きりで1時間ぐらい珈琲を飲みながら話を聞いた。

   覚えていることは、珈琲が好きで日に40、50杯飲むが、インスタント珈琲でも何でもかまわない。酒は飲まないが、京都・嵐山に酒を霧のように吹きかけて出すそば屋があるが、そこだけは気に入っていて、京都へ行くたびに食べに行く。「しかし、食べ過ぎると酔っ払っちゃってね」。印象に残った言葉は、俳優をやるのはカネのためで、男子一生の仕事とは考えていなかった。健さんが40代のときである。

   健さんの映画は遺作になった「あなたへ」も含めてほとんど見ているが、晩年の作品では「ホタル」がよかったぐらいで感心しない。私のベスト3は一連の昭和残侠伝シリーズ、「居酒屋兆治」「八甲田山」。残侠伝は今でも気が滅入ったときに気合いを入れるために見る。

   私が『週刊現代』編集長になった当初、プレッシャーのためかうつ状態になったことがあった。会社が近くなると冷や汗が吹き出てきて動悸が速くなってしまう。そんな自分の弱さを鼓舞するために、残侠伝を見てから出かけたことが何度もあった。ヤクザ、右翼、中核派などとトラブルになって話し合いに行くときには、「唐獅子牡丹」のなかの「なんで今更 悔いがあろ ろくでなしよと 夜風が笑う」という歌詞を口ずさんで『敵地』へ斬り込んだものだった。

   安倍首相が解散に踏み切ったが、テレビで安倍と高倉健の映像を見ながら、不謹慎だが、こんなことを想像した。安倍さんの姿に健さん演じる花田秀次郎が殴り込みに行くときのシーンを重ね合わせ、「安倍総理、死んでもらいます」解散はどうだろうかと。

内閣参与・飯島勲の総選挙見立て「自民党は上積み。民主党はまたもや議席減」ホントかね?

   これほど解散する大義のない税金むだ遣い選挙は前代未聞だ。各誌選挙予測をやっているが、自民党が現有議席を減らすことは間違いないが、それでも単独過半数確保は間違いないという見方が大勢のようである。

   飯島勲内閣参与は『週刊文春』で「電撃解散で自民は議席を上積みする」とまでいっている。その根拠はこうだ。<四十三年間の永田町暮らしの経験から見て、間違いなく自民党は現有勢力から上積みをするよ。(中略)民主党がいくら慌てて候補者をかき集めて擁立しても、知名度のない新人が当選するわけないからさ。またもや議席減でしょうね。

   だいたいね、解散して公示、投票と流れていくこんな短期間で選挙結果がどうこうなんて、ほとんど何の関係もないんだよ。どんなに遅くても公示日の時点で九割の議席は当落が固まっている。その後の十日間余りは残り一割の戦いでしかないのよ>

   そんなバカなことがと私は思うが、選挙民の最大の悩みは自民党は嫌だけど入れたい政党がないということだろう。そういう人は共産党か、それが嫌なら公明党でもいい。今度の選挙は争点がないといわれる。

   飯島氏のいうように野党がバラバラだから自民は負けないと高をくくり、単独過半数を維持したらアベノミクスが支持されただけでなく、原発再稼働も特定秘密保護法も憲法九条を蔑ろにしたこともすべて信任されたと、安倍首相は言い出すに決まっている。そうさせてはいけない。この選挙を通じて国民の意思を表明するためには、自民党を勝たせないことだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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