商業
現状
商社、長い低迷期をようやく脱し、復活の兆し
首都東京の水産物をまかなう築地中央卸売市場
日本経済発展の象徴でもあった「商社」が、1990年代に入ってからの長い低迷期をようやく脱し、復活の兆しを見せている。2004年3月期の連結決算によると、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅の大手5社のうち、赤字を記録した伊藤忠商事を除き、4社が過去最高の利益を計上した。世界的に資源・エネルギー価格が高騰したのに加え、株高で収益が改善した。
各社は利幅の薄い貿易業務から、事業投資に力を入れ、投資した会社の配当やキャピタルゲインを収益の柱にするよう構造転換を進めている。05年3月期は5社ともに過去最高益を更新する見通しだ。
2000年以降、商社間の事業統合が急ピッチ
経済のグローバル化、金融ビッグバン、連結決算時代に入り、商社も事業の再編、統合を余儀なくされている。特に2000年以降、商社間の事業統合が急ピッチで進んだ。
ルーツが同じ伊藤忠商事と丸紅は、01年10月に鉄鋼事業を統合して伊藤忠丸紅鉄鋼を設立した。三井物産と住友商事は02年2月、建材事業を統合して三井住商建材を設立している。三菱商事と日商岩井が03年1月に鉄鋼事業を統合してメタルワンを設立。
一方で、流通事業への資本参加も相次いでいる。住友商事が西友へ、三菱商事がローソン、伊藤忠商事がファミリーマートへという具合だ。
またナノテクノロジーをはじめとする新技術にも着目し、将来の収益源に育てようと各社ともに投資に積極的だ。資源開発のビジネスにも前向きである。
バブル崩壊後、大手商社は不動産や金融商品の投資損失処理と、低採算事業の整理に苦しんできたが、現在は新たな成長戦略の構築を模索している。手数料中心の「口銭」ビジネスから、成長性の豊かな分野に投資して配当や事業の売却益を得る事業投資へのビジネスモデルの転換を目指す動きである。
専門商社も合併や吸収合併が相次ぐ
東京・丸の内の三菱商事本社
鉄鋼、機械、化学、繊維、医薬品、食品など特定分野に特化した専門商社も「冬の時代」を迎えて久しい。このため、合併や吸収合併が相次いでいる。
2000年4月には、食品分野などに強みを持つ中堅商社の加商が、トヨタ自動車グループの商社である豊田通商に吸収合併された。医薬品分野ではクラヤ薬品、三星堂、東京医薬品の3社が合併してクラヤ三星堂になった。2002年にはクラヤ三星堂の誕生に危機感を募らせるライバルのスズケンが、オオモリ薬品と合併した。医薬品商社であるアズウェル(現在はアルフレッサ)、バイタルネットなども合併を繰り返している。
今後は外資やベンチャー企業の参入で、業界の再編がさらに加速する可能性がある。
保有する不動産や株式の損失が膨らんだ総合商社であるトーメンは2002年12月に、トヨタ自動車グループの商社である豊田通商との経営統合を前提とする再建計画を発表した。経営統合は2006年に実現する見込みだ。「トヨタ商事」誕生への大きな一歩と見るべきだろう。