2020年 2月 17日 (月)

『日報隠蔽』の著者に聞く(下) 南スーダンPKO、自衛隊はなぜ危険な現地に踏みとどまったのか

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個人が行動して組織を追い詰めた

布施 『日報隠蔽』の「あとがき」で三浦さんが書いていますけど、組織っていうんじゃなくて個人の連帯、それが1つのキーワードだと僕は思っているんです。
 日報問題が去年、どうして大臣の辞任まで行ったかというと、本当にいろんな人、NHKとか、フジテレビとか、自衛隊の中の人だったり、それは背広組だったり、制服組、いろんなところにいる個人がですね、別にお互い連携をとっていたわけじゃないんですけども、それぞれの信念だったり思いに基づいて行動した結果なんですね。お互い、顔も名前も知らない個人ですよ。こうして本を書いていく中で、今回の日報隠蔽の1つの裏テーマというか(笑)、それがこの「個人の連帯」なんじゃないかなというふうに思いました。

――ツイッターでもお書きになっていました。

布施 そうですね。自衛隊をPKOに出すべきか、出すべきじゃないかとか。それは僕みたいな立場と、自衛隊の中にいる人とでは全然違うわけですけども。でも、少なくとも、やっぱり事実を隠蔽したり、臭い物に蓋をしたり、何か間違ったことを隠す。そういう不正っていうのは、決して自衛隊の中にいる人たちにとっても、自衛隊にとってもプラスにならないと思った人たちがいるんですよね。そういう人が、いろんな組織の中に、いろんなポジションでいて、その人たちがそれぞれの役割を果たした結果、ということですね。
三浦 組織って、確かに組織防衛や自分の保身ばかりを考える人もいるにはいるんですけど、中にはリスクを犯しても「これはやんなきゃいけない」って思ってくれる人が、どの組織にもたぶんいるんです。
布施 稲田大臣による真相究明、最後は非常にうやむやに終わっちゃったので、忸怩(じくじ)たる思いもありますけれども、少なくとも、最初は全部伏せられようとしたわけですから、そこを切り開いていって、最後大臣を辞任に追い込んだ。僕は最初のきっかけを作っただけなので、そこからいろんな人たちがやっぱりつないでいったというか。そこはやっぱり非常に今回、僕の中でも印象的でしたよね。
三浦 僕は、ジャーナリストになりたくてなった人間だし、ジャーナリズムの可能性というものを今も信じているんです。ただ、新聞社にいると、部数が急激に落ちてきていて、組織ジャーナリズムの力が徐々に弱くなってきているというのは、最近事あるごとに感じています。昔であれば、リクルート事件にしても、そのほかの調査報道にしても、1つの新聞社が組織としてそれを戦い抜くことができた。組織の元気の良かったときは、組織単体で戦うことができたんです。

――確かにそういう面もありますね。

三浦 でも、これからジャーナリズム全体を考えていった時に、新聞やテレビの力が相対的に弱くなっていく中で、1組織と権力という戦い方は、なかなかやりにくくなってくるのではないかと考えることがあるんです。今回、朝日新聞は森友問題で気を吐きましたが、それまではメディア全体がなんかこう、政権に押さえつけられている感じが世の中にはうっすらと漂っていた。
 それゆえに、今後、当面は組織が調査報道を担って行くにしても、仮に1組織が権力と対峙できなくなったときには、いわゆる有志というか、志のある個人が組織を越えて、つながり合って、戦っていく。イメージにすると、スーパーコンピューターみたいなデカい固まりではなく、個人のノート型パソコンをつなぎ合わせて、スーパーコンピューター的ないわゆるスペックを維持して、大きな敵に喰いすがっていく。それらがうまくリンクしたとき、大きな力になるんじゃないかと思います。

J-CASTニュースBOOKウォッチ編集部


●布施 祐仁(ふせ ゆうじん)
1976年、東京都生まれ。ジャーナリスト。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)で平和・協同ジャーナリスト基金賞、日本ジャーナリスト会議によるJCJ賞を受賞。このほか著書に『日米密約 裁かれない米兵犯罪』(岩波書店)、『経済的徴兵制』(集英社新書)、『災害派遣と「軍隊」の狭間で―戦う自衛隊の人づくり』(かもがわ出版)、『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(伊勢崎賢治氏との共著/集英社クリエイティブ)など。現在、「平和新聞」編集長。

●三浦 英之(みうら ひでゆき)
1974年、神奈川県生まれ。京都大学大学院卒業後、朝日新聞社に入社。東京社会部、南三陸駐在、アフリカ特派員などを経て、現在は福島総局員。2015年、『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』(集英社)で第13回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『水が消えた大河で─JR東日本・信濃川大量不正取水事件』(現代書館)、『南三陸日記』(朝日新聞出版)など。



   【日本のPKO問題】
■南スーダンPKO日報問題
陸上自衛隊は2012年1月から17年5月まで、復興支援で南スーダンPKOに施設部隊を派遣。日報の開示請求にたいし、「廃棄した」として不開示にしていたが、のちに陸自での保管が報じられ、7月、当時の稲田朋美防衛相が引責辞任した。

■イラクPKO日報問題
陸上自衛隊は2004年1月から06年9月まで、イラクの復興支援で延べ約5600人を派遣。「ない」とされていた日報が存在していたことを、18年4月に認めた。

■カンボジアPKO問題
1992年から陸上自衛隊の施設部隊を派遣。文民警察官として警察官75名も派遣されたが、93年、襲撃事件で岡山県警の高田晴行警部補が亡くなった。

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