2024年 4月 25日 (木)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(14) 世界第3の感染者数インドにみる「経済再開」と「防止策」

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ロックダウンで1億人が失職、出稼ぎ労働者が地方に感染拡大

   産業や交通、ビジネスを全面的に停止する都市封鎖は、経済を直撃した。日本貿易振興機構(ジェトロ)の7月7日付「地域。分析レポート」によると、これまで7~8%で推移してきたインドの失業率は4月には23%にまで跳ね上がった。各国機関による2020年度のインドの経済成長率は軒並み低下を予測し、国際通貨基金(IMF)は4月14日、インドの本年度の国内総生産(GDP)成長率を1・9%と予測した。実に1991年以来の低成長率だ。

   構造改革や規制緩和などで、インドは21世紀には高度の成長を遂げ、2005~07年には3年連続で9%台を達成するなど、一時は中国を越える成長に沸いた。とりわけ、グジャラート州はインフラ整備や外資導入で成長が目覚ましく、その州政府首相としての実績を積んだモディ氏は、財界などの期待を負って2014年に政権の座についた。

   実際、就任から5年間の実質GDP成長率は平均7・5%の好成績だった。

   しかしインドは支出面で約56%、産業面では49%がサービス業に依存しており、この間の成長は多く、大都市における消費やサービス面の伸びによるものだった。

   モディ首相は、インフラ整備やビジネス環境の改善を進める一方、これまでGDPに占める割合が15%程度だった製造業を、25%にまで高める「メイク・イン・インディア」などの政策を打ち出した。しかし、昨年10~12月期には前年同期比で4・7%と成長率は約7年ぶりに低く落ち込み、インド経済にも陰りが見え始めていた。

   その矢先のコロナ禍と、都市封鎖である。インド国内大手のマルチ・スズキなど自動車販売はゼロになり、国内・国際線の運航停止で航空業界も打撃を受けた。ノムラ・シンガポールは4月に、今年度のインドの実質成長率見通しをマイナス0・5%に引き下げるなど、厳しい見方が広がった。

   それだけではない。インドには特殊な事情があった。インドでは都市封鎖中に約1億人が失職したといわれるが、その多くは、都市部で働く出稼ぎ労働者だ。売り子などサービス業で働く人々が、その日暮らしの職を失った。縁故を頼って故郷を目指そうにも、公共交通機関がない。やむを得ず、自転車で、徒歩で郷里に向かった。それが、大都市の感染をインド各地に広げた。

   インドの高度成長を支えたサービス産業の担い手が、都市封鎖で職を失い、やむなく郷里に帰り、感染の拡大を招いた。痛ましくも、厳格なロックダウンが経済を直撃したばかりか、それがさらなる感染拡大につながるという悪循環になったとみられる。制限の緩和によって、地方の出稼ぎ労働者が再び戻り、いったん沈静化したかに見える大都市でも再び感染の兆しが見える。

   実際、政府による段階的な制限解除の宣言後も、感染拡大が続く州では地域別に都市封鎖を継続したり、新たな制限をかけるところが出ている。

   たとえばムンバイ都市圏などでは、必要不可欠なサービスを提供する商店以外は,営業は午前9時から午後5時までに限られ、人の移動は、生活上必要不可欠な活動と営業活動のみが許される。買い物については居住地付近の市場や商店などに限り、不要不急の距離移動は許されていない。

   また、グジャラート州では夜間外出の禁止が午後10時から翌午前5時になり,レストラン営業は午後9時まで、商店営業が午後8時までとなった以外は、以前と同じ規制を続けるといった具合だ。

   さらにカルナータカ州は7月14日からバンガロール周辺に1週間の都市封鎖を行い、ビハール州は7月10日から同月末まで、独自の全面的な都市封鎖に踏み切った。

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