争点にならぬ重要テーマ
こうした情勢の中で、「令和のコメ騒動」を足場に、「2000円の備蓄米の無制限放出」に打って出た「小泉劇場」は、石破内閣の支持率を上向きにしたものの、参院選の争点にはなっていない。高騰した米価の抑制は「本丸」ではなく、従来の減反政策を抜本的に転換して、激減した農家をベースにコメ作りの将来設計をどう描くか、が本題だからである。政府は1年後の取りまとめを目指すが、先行して設計図を提示する意欲的な政党があれば、聞いてみたいものだ。
もうひとつの課題、トランプ米国大統領の高関税をめぐる交渉は、参院選中の「成果」は難しそうだ。一方で、防衛費の「GNP(国内総生産)5%」要求をはじめ、戦後80年間(条約締結は1951年)続いてきた日米安保体制を根本から変更しかねない動きも出てきている。NATO(北大西洋条約機構)との連携やアジア太平洋地域での台湾有事にそなえた安全保障体制の検討が急務になっている。こうした広義の「対米関係」についても、参院選の候補者の討論が聞きたいものである。