「欧州の法規制に合致するよう進化させていかなくては」
初代モデルの登場以来、28年の伝統を誇るシビックタイプRの販売を終了する理由について、欧州ホンダは「自動車産業は変化している。我々の商品ラインアップは欧州の法規制に合致するよう進化させていかなくてはならない」(欧州戦略と商品開発を担当する責任者、ハンナ・スイフト氏)と説明している。
スイフト氏は具体的な欧州の法規制について言及していないが、欧州連合(EU)が2028年から始める「EURO7(ユーロセブン)」という新しい排ガス規制を指しているのは間違いない。
ユーロ7は従来の窒素酸化物(NOx)や一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)の規制が厳しくなるだけでなく、新たに亜酸化窒素(N2O)も規制の対象となる。排ガスだけでなく、ブレーキダストやタイヤ摩耗の粉塵も規制に加わる。タイヤの粉塵などはマイクロプラスチックとなり、生態系に悪影響を与える可能性があるからだ。
さらにEUには「企業平均燃費(CAFE)」という環境規制がある。これは自動車メーカー各社が販売したクルマの平均燃費が目標値をクリアしない場合、罰金を支払うという制度だ。EVやFCVの比率の高いメーカーには有利だが、シビックタイプRのような燃費の悪い高性能車が売れれば売れるほど、メーカーは自社の平均燃費を悪化させることになる。