飲酒問題相次ぐJALが再発防止策、γ-GTPも参考...高リスクなら乗務停止 出口見通せぬ管理強化策、社内からは不満も

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   運航乗務員(パイロット)による飲酒問題が相次ぐ日本航空(JAL)が2025年9月30日、再発防止策を国交省に提出した。「飲酒傾向管理スキーム及び体制の再構築」など7項目が柱。一連の問題の背景には、経営陣とパイロットの間に「距離」があるとも指摘されており、7項目の中には、経営陣とパイロットとの対話の場を設けることもうたっている。

   「飲酒傾向管理スキーム」では、これまでは3段階でリスク評価していたものを、γ(ガンマ)-GTPといった肝機能の数値をはじめとする健康関連のデータを重視して4段階に改めた。乗務前のアルコール検査や血液検査の回数も増やす。再発防止策は外部の専門家の知見も踏まえて見直し、11月に改めて国交省に提出するとしている。

  • 問題を起こした機長はボーイング787-9型機に乗務予定だった(羽田空港で撮影)
    問題を起こした機長はボーイング787-9型機に乗務予定だった(羽田空港で撮影)
  • 「飲酒傾向管理スキーム」の概念図。6段階に区分し、最もリスクが高い赤のエリアに該当したパイロットは乗務できなくなる
    「飲酒傾向管理スキーム」の概念図。6段階に区分し、最もリスクが高い赤のエリアに該当したパイロットは乗務できなくなる
  • 問題を起こした機長はボーイング787-9型機に乗務予定だった(羽田空港で撮影)
  • 「飲酒傾向管理スキーム」の概念図。6段階に区分し、最もリスクが高い赤のエリアに該当したパイロットは乗務できなくなる

約2200人中6人が「飲酒リスクあり」で乗務外れる

   JALでは24年4月に米国、同12月には豪州で、機長が飲酒をめぐるトラブルを起こしている。さらに25年8月に、機長=懲戒解雇=が滞在先のハワイ・ホノルルで飲酒したことが原因で乗務ができなくなり、計3便で最大18時間遅れている。これを受けて国交省は9月10日、JALに対して行政指導にあたる厳重注意を行い、9月30日までに再発防止策の提出を求めていた。

   JALは9月30日に記者会見し、主に安全面のトップにあたる「安全統括管理者」を務める中川由起夫常務が、再発防止策の内容を説明した。中川氏によると、これまでの「飲酒傾向管理スキーム」では、「過去の検知事例」「過去の飲酒に関わる不適切事案」「所属部からの情報」「健康管理情報」といった指標に点数を割り当て、その合計から3段階で評価していた。

   これに対して10月から暫定運用が始まり、12月の本運用を目指している新基準では、γ(ガンマ)-GTPといった肝機能の数値をはじめとする健康関連のデータも判断材料にして6段階で評価。最もハイリスクな「飲酒リスクあり」と評価された人は、いったん乗務から外すことにしている。その結果、訓練生を除けば約2200人いるパイロットのうち、6人が乗務から外れている。JALは9月10日の会見で、4人を乗務から外したことを明らかにしている。基準を変えたことで対象者が増えたことになる。

   乗務再開の判断基準は未定だ。中川氏は次のように説明した。

「弊社だけで決められるような簡単な問題ではないと思っている。ぜひ、外部のアルコールの専門家の知見も得ながら早急に作ってまいりたい。血液検査で(判断基準の)ゾーンが下がったというだけですぐに(復帰)、と言ったような簡単な問題ではないのかもしれない、というのは感じている」
姉妹サイト